2014/12/25

羊(の糸)をめぐる冒険 2




前回のお話から少し時間が空いてしまいましたが・・・前例のない、二重織りのストールを作るために、私は、ポズナンに住んでいるアリチアのアトリエを訪ねたのでした。

アリチアは、ポズナンの駅に私を迎えに来てくれました。彼女のアトリエに向かう車の中で、彼女が大学では考古学と、美術の修復の勉強をしていたことや、その後織物に目覚めたことなどを話してくれました。機織りに目覚めてからは、専門学校に通い、その後は独学で織物をしています。


彼女のポーランドの織物やテキスタイルへの知識は豊富で、アトリエでは、アリチアがコレクションしているたくさんの書籍を見せてもらうことも出来ました。これらは、絶版になっていたり、地方の民族博物館でしか手に入れられないものも多く、彼女自身織物の研究のためにたくさんの地方に足を運んでいました。


特に、アリチアは廃れてしまったポーランドの草木染めの研究をしていて、自らも自分で紡いだ羊毛を染めて織っています。

今は化学染料に取って代わられてしまった、ヤノフ村の織物もかつては草木染めで染められていました。私の(というか、織手さんにお願いするわけだけど・・)、今後の目標も出来ました。


アリチアの織物のストール


アリチアのアトリエの糸車

さて、肝心の糸ですが、アリチアとの話の中で、ポーランドの羊毛は他国のものと考えても硬い羊毛だということがわかりました。


羊毛が生産されているポーランドの南部(山岳地帯)はポーランドの中でも寒く、雪が多い地域です。そのような厳しい自然環境で暮らす羊の毛は、長くて太く、強い毛で、耐久性は良いのですが、出来上がりは固い風合いになり、カーペットなどに向いている織物が出来上がります。



一方、オーストラリアやニュージーランドなどのストレスの少ない温かい地域で育っている羊毛は、毛が柔らかく、保温性、光沢性などにも優れ、メリノウールなど、高級ウールとして使われています。


二重織りの為、普通の布よりもの倍の厚みになることを考慮して、糸も通常ストールなどに使われるものよりもの超極細のものを使う必要があること。一方で素材が柔らかければ、超極細でなくても、ゴワついた印象にはならないかも・・との意見も聞きました。


自宅に帰ってからアリチアのアドバイスを元に、いくつかの糸を取り寄せてみました。もちろん、予算などもあるので、そこら辺も考慮しつつ。

左から、
◯メリノウールとシルクの混合極細糸 
◯アイスランド産の細羊毛糸、これはニットなどの編み物によくつかわれる糸です
◯シルクとアルパカの混合極細糸
◯リネンの細糸
◯英国シェットランド島の羊毛。シェットランド島の羊毛は、スポンジ性や保温性に優れていると言われています
◯最初のものよりも少し太めの高級メリノウール


アリチアの話を聞いて、ヤノフの織物に合う、だいたいの太さや羊毛の性質は想像がつき始めていましたが、やはりカタログと実際の糸は全然違い、肌触りの観点からは、ポーランドの羊毛と同じ理由で、アイスランドとシェットランドの2つの北国の羊毛はやはりストールには合わないという結論になりました。逆にひざ掛けや、毛布などにむいているなぁと思いました。

また、どの糸にしても普段のヤノフ村の織物に使われている手紡ぎの糸に比べると、予想以上に細く、難しい作業になるのは容易に想像が出来ました。ヤノフの織手さんたちは、かつて持ち込みの糸で、織物を織って欲しいなんて言われたことがないはず。ましてや、ストールを作って欲しいなんて。
こんなめんどくさい作業に付き合ってくれる方がいるのだろうか・・・と内心とても心配でした。


そして、今年6月、これらの糸を持ってヤノフ村の織手さんに新しいプロジェクトの嘆願に行ったのでした!

続く-------

今、12月27日までの期間限定で、チェドックザッカストアのウェブショップで、ストールの一部を販売しています。こちらからどうぞ
チェドックザッカストアウェブショップ



<ヤノフ村の織物展>もいよいよ今週末までです!私も日曜日に在廊しているので、遊びに来てくださいー。
期間:12月9日(火)-12月28日(日)
   
チェドックザッカストア浅草
-1Fギャラリー-
東京都台東区駒形1-7-12
Tel:050-3596-9500
営業時間:12:00-19:00
定休日:22日(月)


SLOWART在廊:28日(日・最終日)
ご質問、ご要望、ご注文、織手さんへのメッセージなどなどありましたら、ぜひお声をおかけくださいませ。

もちろん、メールなどでもお問い合わせください。
info<アットマーク>slow-art.pl
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2014/12/19

羊(の糸)をめぐる冒険 1


4年目を迎えたヤノフ村の織物展では、今年はじめて<身に付ける織物>である2重織りのストールをご用意しています。



普段の糸の1/10くらいの極細の絹とアルパカの混合糸を使い、これまでにない繊細で美しい織物のストールが完成しました。



展覧会初日に来てくださった織物教室の方々には、ただでさえ大変な2重織りで、こんなにも細い糸を使った細かい織りは考えられない、素晴らしい!との言葉もいただきました。

ただ、このストールが完成するまでには、色々な人の助けや、織手さんの並々ならぬ苦労がありました。



ヤノフ村の織物はご存知の通り、羊毛を紡いで作る織物です。 (写真はルドガルダさん)

たて糸を2重に張って、織る、という性質上、どうしても普通の織物よりも分厚く、ゴワゴワした印象になってしまいます。<身に付ける>という感じではないんですよね。



ただ、この織物の可能性をもっと広げたい!タペストリーやクッションのような飾りだけではなくて、もっと使えるものにしていきたいとずっと思っていました。そうすれば、もっと使用の幅も広がるだろうし、沢山の人に手にとってもらえるのではないかなぁと。


JanowX SLOWARTのストールプロジェクトが始まったのは、ポーランドでは一斉に緑が芽吹く今年の5月でした。うきうきと新しいことを始めるのにはとてもよい季節でした。


汚れを取り除いて、干している羊毛 

まずは、織手さんに相談しました。この村の2重織りでストールを作る方法。
やはり従来の手紡ぎの羊毛ではなかなか難しいんじゃないか・・とのこと。ウールといえば、やわらかな肌触りと、温かさの象徴のようなものなのに、なぜ!?(その答えは後ほど・・)

やはり、糸を変えるしかないのかなと思うのですが、前例がないので、いったいどんな糸を使えばいいのか検討がつかないのです!2重織りに適した細さは?機織りに耐えうる強度は?ウールにするのか、そしたらどんなウールがいいのか?それとも他の素材がいいのか?

いくつかあたった、織物の本や雑誌にも2重織りで織るストールというのは載っていなかったのです。それほど、2重織りにはこのアイディアは適していないのでしょうか。

そんな時、知り合ったのが、アリチアのウェブサイトでした。

アリチアのウェブサイト;http://www.weaverschronicles.com/


 (Copyright; Alicja Tyburska)

アリチアは、ポズナンで機織りのアトリエをもち、ストールやショールを織っています。その美しい手織りの作品に惹かれ、私はすぐに、彼女に会って、アドバイスをもらえないか連絡をしました。

(Copyright: Alicja Tyburska)

すぐに、返事は来て、快諾。なんと、彼女も以前ヤノフの織手さんたちに会ったことがあり、ヤノフの織物も所有しているとのことでした。

そうなれば、話は早い!とその週末には彼女の住むポズナンに列車に乗り出かけたのでした。


羊の糸をめぐる冒険2 に続く。



期間:12月9日(火)-12月28日(日)
   
チェドックザッカストア浅草
-1Fギャラリー-
東京都台東区駒形1-7-12
Tel:050-3596-9500
営業時間:12:00-19:00
定休日:22日(月)


SLOWART在廊:28日(日・最終日)
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2014/12/16

生命の木


浅草チェドックさんでの<ヤノフ村の織物展>、おかげさまでご好評開催中です。今年新たに用意した、ポーチや小型のトートバッグ、新作のバッグやブックカバーはすでに品薄になってきているようです。

さて、今年は<生命の木>というテーマで開催しており、生命力と神話性を帯びた、たくさんの織物を用意しました。

今日は、その<生命の木>について少しご紹介します。


<生命の木>は、神話や宗教的シンボルとして世界各地で表現されています。それらは私達の内に息づく生命の象徴(シンボル)であり、生命の力・聖なる力・大いなる力・愛の力・生命の賛歌などを示しています。





ただ、 ヤノフ村の織物に<生命の木>のモチーフが登場したのは、実は比較的最近のことです。1920年台に入り、手織り文化は、機械織りに押され、衰退し始めていました。それを危惧したワルシャワ大学のエレオノラ・プルティンスカ教授が、それまでは植物柄や伝統的な幾何学文様を中心に織っていたヤノフ村の織手たちに、売れる新たな模様を提案しました。そのうちの一つが、<生命の木>のモチーフです。


プルティンスカ教授との協力関係は、村の織手が1人のアーティストとして自ら構図や色どりを考え、パターンを創造するという流れを生みだしました。織手の個性やデザイン力、技術が存分に発揮される織物へと変わっていったのです。従来の幾何学模様を織るのみだった伝統的な織物は、この頃からより芸術的で創造的な織物となったのです。



生命の木の織物や、前年度のテーマであった「村の生活」の織物は、この村の織手たちの芸術性が存分に発揮された織物であると言えます。



今年展示している大作の数々も、デザイン性や構図に優れた素晴らしいものばかりです。

ヤノフ村の織物は、一つの織物に様々なストーリーが織られており、見ればみるほど愛着が増します。また、織物一つ一つの個性は、そのまま織手の個性として織り手の顔が目に浮かびます。
お店でお手にとり、実際にご覧いただきたいです。

浅草チェドックでの織物展は今月28日(日)までです!

期間:12月9日(火)-12月28日(日)
   
チェドックザッカストア浅草
-1Fギャラリー-
東京都台東区駒形1-7-12
Tel:050-3596-9500
営業時間:12:00-19:00
定休日:15日(月)・22日(月)


SLOWART在廊:28日(日・最終日)
ご質問、ご要望、ご注文、織手さんへのメッセージなどなどありましたら、ぜひお声をおかけくださいませ。

もちろん、メールなどでもお問い合わせください。
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2014/12/09

ヤノフ村の織物展 東京展初日~大盛況~


今日は、浅草のチェドックさんで<ヤノフ村の織物展>初日でした。私も在廊させて頂いて、普段ポーランドに住んでいるため、なかなかお会いできないたくさんの方にお会いし、ご挨拶させていただき、あっという間の楽しい一日でした。

織物を実際にされている方は、織りの技術の高さに関心を持っていただき、世界各地の風土研究をされている方には、伝統的な文様に関心を持っていただき、雑貨屋さんからは小物のかわいさを褒めてもらい♡、他にもポーランドに興味を持っていただいたり、織り込まれている動物たちの表情や、織手さんの特徴に興味を持っていただいたり、本当に来ていただいた方にはみなさんじっくりご覧いただき、楽しんでいただけているようで、とても嬉しかったです。

おかげさまでたくさんの織物が旅立って行きましたが、今回はそれをものともしない物量なので、いつ来て頂いても楽しんでいただけると思います!(でも、やっぱり一点ものなので・・早いほうが選ぶ楽しみがありますよーー)

私も今週土曜日(13日)にまた朝から在廊していますので、遊びに来てくださいね。

期間:12月9日(火)-12月28日(日)
   
チェドックザッカストア浅草
-1Fギャラリー-
東京都台東区駒形1-7-12
Tel:050-3596-9500
営業時間:12:00-19:00
定休日:15日(月)・22日(月)


SLOWART在廊:1月9日(火・初日)、13日(日)、28日(日・最終日)
ご質問、ご要望、ご注文、織手さんへのメッセージなどなどありましたら、ぜひお声をおかけくださいませ。

もちろん、メールなどでもお問い合わせください。
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2014/12/08

ヤノフ村の織物展@東京チェドック いよいよ明日から!


徳島のレテンカさんのイベント、たくさんのお客様がお越しいただき盛況のうちに終了出来ました。ありがとうございます。

さて、あす(12月9日)からは、いよいよ東京(浅草)チェドックさんで織物展が始まります!

チェドックさんでは今回で4度目となるポーランド、ヤノフ村の織物展。今回は「生命の木」というテーマで開催します。人々や動物たちが生命の象徴の木を囲み、神話的な世界観を作りだす、織手たちのデザイン性と想像性にあふれた大作の織物がたくさん揃っています。


私も、おととい帰国して、今日搬入に行ってきました。ところ狭しと、新作がたーーーーくさん並んでいます↓



やさしい色合いのリネン糸で織った織物で作った小さめのポーチ。こちらは裏表違う柄が楽しめます



 今までの展示で小さめのバッグが欲しいという声がたくさんあったので、それにおこたえして作ってみた、小さいトートバッグ。ちょっとしたおつかいなどに手軽に使えそうです。



毎回人気のクッションもサイズを豊富にたくさんそろえました。上の写真のクッションはダヌータさんの新しいデザインの幾何学模様のもの。モダンで温かい雰囲気のクッションで、とても素敵です。直接手にとって見て下さいね。

 これは、ヤノフ村の村章。展示会場でも一番目立つところに飾ってあります





 もちろんタペストリーもたくさん揃えています


こちらも新作のテーブルセンター。トートバッグやポーチと同じく、リネン糸で織っており、使うたび、洗うたびに柔らかさと手触りがまして、お部屋に馴染んでいくと思います。


これも新作のストール。アルパカとシルクの混合細糸で織ってもらいました。とっても素晴らしい出来上がりなので、ぜひお店で見てみてください。これを作るまでのお話もこのブログに書きたいと思っています。だって、けっっっっっこう大変だったんです!でも納得の仕上がりに大満足。

去年人気だった、A4サイズの書類がすっぽり入るとても使いやすくかわいいバッグも新しいものを置いています。


期間中、このブログでも今年のテーマである、生命の木の織物の初回や、今年の織物の紹介や仕入れの時のお話、新作グッズの創作話などちょこちょこと載せていこうと思っています。

皆様のたくさんのお越し、楽しみにお待ちしております。

私も12月9日、13日、28日に在廊予定です。ヤノフのこと、織手さんのこと、織物の作り方のことなどなどなんでもお聞き下さいませ。



ヤノフ村のおばあちゃんたちからも、「イベントの成功を心よりお祈りしています」との連絡が。

期間:12月9日(火)-12月28日(日)
   
チェドックザッカストア浅草
-1Fギャラリー-
東京都台東区駒形1-7-12
Tel:050-3596-9500
営業時間:12:00-19:00
定休日:15日(月)・22日(月)


SLOWART在廊:1月9日(火・初日)、13日(日)、28日(日・最終日)
ご質問、ご要望、ご注文、織手さんへのメッセージなどなどありましたら、ぜひお声をおかけくださいませ。

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