2011/11/30

ミレーの描く農村の手仕事

Shepherdess with her Flock, 1863 「羊飼いの少女」

先 日パリに行ってきた時のこと。オルセー美術館のこの絵画の前で立ち尽くしました。秋の夕日の中、 編み物に夢中になっている羊飼いの少女。天上の雲間からは神々しい光が差し込み、草を食む羊たちの羊毛と少女またその大地を黄金色に照らし出しています。 静謐でやさしく、美しい一枚です。

The Angelus, 1857-59 「晩鐘」

描 いたのは「落ち穂拾い」や「種をまく人」で有名なフランスの画家Jean-François Millet ジャン・フランソワ・ミレー。 ミレーは農民の姿を崇高な宗教観を込めて描いた画家です。ミレーの描いた素朴で力強い農民たちの日々の生活は大地に感謝し生きる営みの尊さを 見るものに訴えかけます。

絵の中の「羊飼いの少女」は、ただ夢中に編み物をしています。自分の羊から取った羊毛の毛糸でこれからの冬の季節に備えて温かいものを編んでいるので しょうか。この絵を見た時、ここにSLOWARTが追い続ける民芸の原点を見たような気がしました。民芸や手仕事の持つ尊さ、優しさや美しさがこの絵には 表現されています。

ミレーの描いた編み物や、刺繍、縫い物、糸紡ぎをする農民たちの絵を集めてみました。どれも、静かな空気の中仕事に集中している人達ばかりです。こちらも静かにその様子を見守りたくなります。

The Knitter or, The Seated Shepherdess, 1858-60

The Spinner, Goatherd of the Auvergne, 1868-69
 こちらは、やぎを飼う少女。羊毛から糸を紡いでいます。羊毛が巻きつけてあるのは、ハシバミの棒。左手で羊毛を引き出し、右手に持った糸巻きに太さを調整して巻きつけています。
そういえば、フツルの織物リズニクハンナさんも同じようにして糸紡ぎをしていました。
The knitting lesson 1860

 母から子へと受け継がれる手仕事

Woman Sewing By Lamplight 1870-1872
冬の夜 あかちゃんの眠る横でランプの光を頼りに羊飼いのコートのほつれを縫う若い母親。優しいランプの光が彼女の幸せそうな表情と針を持つ手を照らしている。
 
The Young Seamstresses1850

 
Seated Spinner (Emélie Millet)1854


こちら、<小さな村から温もりをつむぐ手仕事・ヤノフ村の織物展>もお忘れなく;)


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2011/11/28

ヤノフ村の織物展 ~ポーランド小さな村からぬくもりを紡ぐ手仕事~



さて、SLOW ARTが満を持してお送りする、新たな巡回展のお知らせです。

ヤノフ村の織物展
~ポーランド小さな村からぬくもりを紡ぐ手仕事~
 
 ヤ ノフはポーランド東北部ベラルーシとの国境40kmほどのところにある小さな村です。村には現在5人の織り手さんがおり、村の伝統の織物を守っています。 今回の展示ではその5人の織り手さんすべてに作品を織って頂きました。伝統的な花や木々、ポーランドの森の動物達ややさしく素朴な村の生活が生き生きと織 り込まれたあたたかい織物です。

日本ではおそらくはじめての企画展となる今回は、貴重なタペストリーからクッション、コースターなどヤノフ伝統の織物の魅力がつまった作品の数々を展示・販売いたします。


期間:2011年12月2日(金)~2012年2月14日(火)

札幌・東京・京都巡回!
Presse
2011.12.2(金)-12.15(木)
札幌市中央区南6条西23丁目5-3
Tel: 011-299-7550 
営業時間:11:00~19:00
定休日:月曜日
http://
momentsdepresse.com/ 
チェドックザッカストア 
 2012.1.6(金)-1.22(日)
東京都千代田区東神田1-2-11
アガタ竹澤ビル404
 Tel03-6240-9500
営業時間12:00-19:00
 定休日期間中無休
京都恵文社一乗寺店
2011.2.1(木)-2.14(火)
京都市左京区一乗寺払殿町10
Tel: 075-711-5919 
営業時間:10:00~22:00 
定休日:無休



SLOW ARTはヤノフの織物やヤノフの織手さん達にとても思い入れがあります。私は今年ヤノフに通い だして3年目になりました。毎年夏の自転車旅行の最終地点がヤノフでした。大切にしてきたヤノフの織物とのつながりを企画展という形で3年目にして行おうと思ったのは、ヤノフにはもう5人しか織り手さん がいないということ。しかもみなさん高齢です。このままでは恐らくヤノフの織物は20年後にはなくなってしまうのではないでしょうか。伝統の灯火がひとつ 消えようとしています。

日本で展覧会を行うことで、ヤノフの織物の衰退がとまるわけではありませんが、ヤノフに良い知らせをもたらせればと思っています。

5人の織手さん全てに注文したのも、微力ではありますがヤノフ全体を元気づけたいと思ったから。
もちろん、こちらでもこれから詳しくご紹介していきます。


お近くに会場がある方はぜひお越しください。ポーランドのおばあちゃんたちが羊毛を紡いで織った、あたたかな織物があります。

今回は、私も東京の会場に遊びに行きます!




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2011/11/24

カウナスの工房から リトアニア100のポッタリー



<フツルの手仕事展>が東京チェドックさんで終了してから、ブログの方も置きっぱなしになってしまってスミマセン!フツルの手仕事展はたくさんの方にお越しいただき、日本ではまだ未知のフツル民族の工芸品の紹介を出きたことを嬉しく思っています。一番人気は、織物のリズニクオレグさんのピサンキでした。リズニクはタペストリーや、座布団、敷物などいろいろ用意していたのですが最終日までに全て売り切れました(感謝)。また、次の名古屋の展示のためにウクライナから取り寄せています。名古屋ロビンスパッチさんでも追加商品が沢山並ぶので、お楽しみに!


 さてさて、チェドックさんではフツルの展示に続いて今週末27日(日)まで、rytasさん主催でリトアニアの陶芸家・ロムアルダさんとスターシスさんご夫妻の陶器展<カウナスの工房から リトアニア100のポッタリー展>が開催されています。

 (写真はヴィルニュスで行われた民芸市から)

 ロムアルダさんの陶器についてはこのブログでも以前ご紹介しました(コチラから)。繊細で細やかな線とリトアニアらしいナチュラルカラーの色使いが素敵な陶器です。

小さなネックレスチャームが人気だそうですよ;)

チェドックさんでの企画展では、リータスさんのオーナーのりこさんが直接注文して買い付けたロムアルダさんの陶器がたくさん並んでいます。


今週末27日までの開催なので、気になる方はぜひ!


又、SLOW ARTの主催企画ではフツルの展覧会が東京で終わったばかりですが、新たな織物の企画展が12月2日から札幌で始まります!今準備中なので、これはまた次の投稿でじっくりとおしらせしますー。



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2011/11/12

フツル民族祭 ~フツル民族衣装名鑑~


好評をいただいています東京チェドックさんでの<ウクライナ・フツル民族の手仕事展>は今日13日がいよいよ最終日です。このブログやチェドックさんのブログなどでも展示・販売中の商品に関して今まで色々と紹介していただきましたが、最終日の今日は私のフツル地方での旅がそうであったように、<フツル民族祭>で締めくくりたいと思います!


今 年の8月末にフツル地方の町コシブで行われたフツル民族祭、各村々から多くのフツル民族の方々が参加し、固い所ではフツル民族の文化や社会につ いて国際会議(!)が開かれ、祭り部分では工芸品の市や、土地のチーズや伝統食品、自家製ウォッカが振舞われ、メイン会場では各村代表団の歌と踊りが一日 中繰り広げられていました。

そんな<フツル民族祭>に参加していたフツル民族の方々のスナップ写真集をどうぞ。同じフツル民族でも本当に様々な美しい民族衣装が面白いです。



写真からもわかるように、フツルの各村々から参加してきている人たちの民族衣装は同じフツル地域でも幅広くことなります。民族衣装に施される刺繍は その人がどの村の出身者であり、どの地位に属しているかを示すものでした。長い時間をかけて縫われる刺繍や高価な宝石やビーズ、革細工などをふんだんに使用した民族衣装は家の財産でもありました。
 
  フツルの民族衣装はこの毛糸で作ったボンボンが特徴的。男性のオーバーの飾り付けになっています。 

 リズニクを売っていたおばさん。シャツとスカートの異なった刺繍がどちらもとても手が混んでおりモノトーンのリズニックを背景に映えていました。

 
こちらは刺繍ではなくビーズを縫いつけたブラウス。老いも若きもビーズの輝きが美しい派手な衣装です。

Noriさんに教えてもらったピサンカちゃん。フツル地方出身のウクライナのアイドル。衣装もさることながら可愛くて、いいこで萌え。

 
こちらはフツルの花嫁の衣装をきていた女の子。ビーズでできたヘッドアクセサリーやネックレスががとても素敵でした。

 こちらは古銭がネックレスに使われています。昔オーストリア統治時代、子沢山だったマリア・テレジアの顔が彫られた硬貨はフツルの人々の間でその恩恵にあやかろうと とても人気だったそうです。フツル民族の工芸品を所有する美術館には当時、マリア・テレジアの硬貨でつくられたネックレスが所蔵されています。


立派な口ひげのフツルの男性。手には羊飼いの斧を持っています

 舞台裏・出演まちの子たち。衣装も女の子たちもかわいいい。

フ ツルの土地で撮ってきた人々の写真や土地の写真、もちろん職人さんの工房の写真など企画展でもたくさん展示しています。このブログで紹介しきれなかった写 真は会場に置いてあるアルバムに収まっていますので、ご来店の際はこちらも合わせてご覧下さい。チェドックさんでの展示は10月13日(日)まで、そのご名 古屋ロビンスパッチさん、徳島レテンカさんを巡回します。

<ウクライナ・フツル民族の手仕事展>
■チェドックザッカストア (ただいま開催中!!)
 2011 10.27Thu-11.13Sun
東京都千代田区東神田1-2-11
アガタ竹澤ビル404
TEL 03(6240)9500
OPEN 12:00-19:00
CLOSE 期間中無休

Robin's Patch 
 2012 1.12Thu-1.31Tue
愛知県名古屋市千種区
稲舟通1-15-3
TEL 052(734)3185
OPEN 12:00-19:00
CLOSE 水曜日

Letenka
 2012 2.11Sat-2.29Wed
徳島県徳島市末広4-8-32
TEL 088(612)8800
OPEN 12:00-19:00(土日祝-18:30)
CLOSE 金曜日
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2011/11/04

自ら生まれる織物 lizhnyk リズニク

今日は、400年以上の歴史をもつフツルの伝統的な織物リズニク(lizhnyk)の話。寒いカルパチアの冬にぴったりのふわふわとした温かい羊毛の織物は、ブランケットや絨毯、ざぶとんや洋服など生活に根ざしたフツルの人々に愛される織物です。

リズニクで有名なヤボリフ村のハンナ・フリマリュクさんを訪ねました。


 早速出迎えてくれたのはハンナさんの家に運び込まれていた刈りたての羊毛。ここから作業が始まります。刈りたての羊毛はゴワゴワしていて汚れだらけで結構汚いです。それを、洗って汚れを落とし、乾燥させて空気をいれ、綺麗な綿毛だけを取り出すと

 こうなります。フワフワお見事。

このウールの綿毛を引っ張り出し、棒に巻きつけるようにして糸を紡ぎとっていきます。リズニクには糸車で紡いだ細い糸は使いませんが、手元で調整しながら糸を均一の太さに引き出していくのはなかなか難しいものです。

 この糸を横糸にして機(はた)で織っていきます。シャトルは使わず、手で横糸を縦糸に通します。

ざっくりとした織目の織物ができあがります
 
 さて、リズニクの話は実はこれからが本番!
織り上がった織物は、機を使って織っていますが毛糸も太めでまだゴワゴワとし、しまりも不十分です。 フツルの人々は、これを長時間激しい水の流に織物を打ち付けることで解決しました。ヤボリフ村には、バリロ(valylo)と呼ばれる山の急流を利用した織物の為の水場がいくつかあります。
古代のスラブ民族は6-8世紀ころからこの方法を使っていたといわれます。また現在わかっている最古のバリロは1515年のものだそうです。

 ハンナさんの家から歩いて5分ほどのバリロに織りたてのリズニクをもって行きました。

バリロ上部大量の川の水が流れこみます

 バリロの下部。織りたてのリズニクを大量の水が激しく打ちつける人口滝の下に1日から半日放置します。こうすることで、織目が引き締まり、羊毛の繊維が柔らかくなり、フワフワとした質感が生まれるのです。

自然の力で完成される織物リズニクをフツルの人々はsamoridny(自ら生まれでてくる織物)と呼んでいます。人の手ではなく、自然が作り出す織物。カルパチアの自然に感謝をしながら暮らすフツルの人々ならではの呼び名だと思いませんか。

 バリロを管理している家の子が手伝いに来てくれました。コレは、THE・ドラム缶乾燥機!この乾燥機の中に一昼夜水を打ち続けたリズニクを入れて水をきります。ゴゴゴゴゴゴゴゴというエンジンの轟音と共に凄まじい勢いで乾燥機がまわりリズニクが絞られていきました。なんだかその光景が凄まじすぎて乾燥機の中のものがタイムトリップしてしまうのではないかと思ったほど・・
 バリロからひきあげてきたリズニクが干されているヤボリフむらの風景。どこの家の軒先にもこうして織物が干してあります。



さてさて、ここまできたらあともう一歩。仕上げです。剣山のような釘針の尖った専用の櫛でガシガシと織物を梳かしていきます。こうすることで、織目から毛を引っ掻き出し、さらにフワフワで温かい空気をたくさん含む織物になります。
フツルの村のマーケットで売られているリズニク


フツルの人々はリズニクには、幸福や富をもたらす力があるとかんがえ、結婚式の際若いカップルに送りそれを生涯家庭で使いました。
手をかけ、時間をかけ、また先人の知恵を用いて作るリズニク。

フツルの織り手の温もりがつまった織物です。
チェドックさんで開催中の<フツル民族の手仕事展> でもザブトンやしきものを販売しています。残り僅かだそうなので、気になる方はぜひ。



■チェドックザッカストア (ただいま開催中!!)
 2011 10.27Thu-11.13Sun
東京都千代田区東神田1-2-11
アガタ竹澤ビル404
TEL 03(6240)9500
OPEN 12:00-19:00
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Robin's Patch 
 2012 1.12Thu-1.31Tue
愛知県名古屋市千種区
稲舟通1-15-3
TEL 052(734)3185
OPEN 12:00-19:00
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Letenka
 2012 2.11Sat-2.29Wed
徳島県徳島市末広4-8-32
TEL 088(612)8800
OPEN 12:00-19:00(土日祝-18:30)
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