2011/11/04

自ら生まれる織物 lizhnyk リズニク

今日は、400年以上の歴史をもつフツルの伝統的な織物リズニク(lizhnyk)の話。寒いカルパチアの冬にぴったりのふわふわとした温かい羊毛の織物は、ブランケットや絨毯、ざぶとんや洋服など生活に根ざしたフツルの人々に愛される織物です。

リズニクで有名なヤボリフ村のハンナ・フリマリュクさんを訪ねました。


 早速出迎えてくれたのはハンナさんの家に運び込まれていた刈りたての羊毛。ここから作業が始まります。刈りたての羊毛はゴワゴワしていて汚れだらけで結構汚いです。それを、洗って汚れを落とし、乾燥させて空気をいれ、綺麗な綿毛だけを取り出すと

 こうなります。フワフワお見事。

このウールの綿毛を引っ張り出し、棒に巻きつけるようにして糸を紡ぎとっていきます。リズニクには糸車で紡いだ細い糸は使いませんが、手元で調整しながら糸を均一の太さに引き出していくのはなかなか難しいものです。

 この糸を横糸にして機(はた)で織っていきます。シャトルは使わず、手で横糸を縦糸に通します。

ざっくりとした織目の織物ができあがります
 
 さて、リズニクの話は実はこれからが本番!
織り上がった織物は、機を使って織っていますが毛糸も太めでまだゴワゴワとし、しまりも不十分です。 フツルの人々は、これを長時間激しい水の流に織物を打ち付けることで解決しました。ヤボリフ村には、バリロ(valylo)と呼ばれる山の急流を利用した織物の為の水場がいくつかあります。
古代のスラブ民族は6-8世紀ころからこの方法を使っていたといわれます。また現在わかっている最古のバリロは1515年のものだそうです。

 ハンナさんの家から歩いて5分ほどのバリロに織りたてのリズニクをもって行きました。

バリロ上部大量の川の水が流れこみます

 バリロの下部。織りたてのリズニクを大量の水が激しく打ちつける人口滝の下に1日から半日放置します。こうすることで、織目が引き締まり、羊毛の繊維が柔らかくなり、フワフワとした質感が生まれるのです。

自然の力で完成される織物リズニクをフツルの人々はsamoridny(自ら生まれでてくる織物)と呼んでいます。人の手ではなく、自然が作り出す織物。カルパチアの自然に感謝をしながら暮らすフツルの人々ならではの呼び名だと思いませんか。

 バリロを管理している家の子が手伝いに来てくれました。コレは、THE・ドラム缶乾燥機!この乾燥機の中に一昼夜水を打ち続けたリズニクを入れて水をきります。ゴゴゴゴゴゴゴゴというエンジンの轟音と共に凄まじい勢いで乾燥機がまわりリズニクが絞られていきました。なんだかその光景が凄まじすぎて乾燥機の中のものがタイムトリップしてしまうのではないかと思ったほど・・
 バリロからひきあげてきたリズニクが干されているヤボリフむらの風景。どこの家の軒先にもこうして織物が干してあります。



さてさて、ここまできたらあともう一歩。仕上げです。剣山のような釘針の尖った専用の櫛でガシガシと織物を梳かしていきます。こうすることで、織目から毛を引っ掻き出し、さらにフワフワで温かい空気をたくさん含む織物になります。
フツルの村のマーケットで売られているリズニク


フツルの人々はリズニクには、幸福や富をもたらす力があるとかんがえ、結婚式の際若いカップルに送りそれを生涯家庭で使いました。
手をかけ、時間をかけ、また先人の知恵を用いて作るリズニク。

フツルの織り手の温もりがつまった織物です。
チェドックさんで開催中の<フツル民族の手仕事展> でもザブトンやしきものを販売しています。残り僅かだそうなので、気になる方はぜひ。



■チェドックザッカストア (ただいま開催中!!)
 2011 10.27Thu-11.13Sun
東京都千代田区東神田1-2-11
アガタ竹澤ビル404
TEL 03(6240)9500
OPEN 12:00-19:00
CLOSE 期間中無休

Robin's Patch 
 2012 1.12Thu-1.31Tue
愛知県名古屋市千種区
稲舟通1-15-3
TEL 052(734)3185
OPEN 12:00-19:00
CLOSE 水曜日

Letenka
 2012 2.11Sat-2.29Wed
徳島県徳島市末広4-8-32
TEL 088(612)8800
OPEN 12:00-19:00(土日祝-18:30)
CLOSE 金曜日
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