2010/07/31

織物の里 その2

テレサさんの工房を後にし次に向かったのは、同じ田舎の一本道沿いにあるDanuta Radulskaさん宅。ダヌータさんは、テレサさんの教え子でもあります。

ダヌータ・ラドルスカさん。私たちが伺った時は、丁度注文が入ったタペストリーを織っている最中でした。

下絵。これを縦糸と横糸を組み合わせた織物になるように、頭の中でデザインを組み立てていきます。

羊毛と自然色が温かいタペストリー。ヤノフの伝統的モチーフ

これはダヌータさんがお嫁入りする際に持ってきた絨毯。薄緑の地に、鮮やかな赤いバラ模様の若い女性にぴったりの素敵な絨毯です。昔は、自分や家族が織った絨毯やタペストリーは嫁入り道具の一つでした。

ダヌータさん宅を後にし、一度オビアッド(ポーランドでは14時~15時の間に一日のメインの食事、オビアッドを食べます)を食べに10km先の<我が農家の宿>に戻ります。家族と一緒にお母さん手作りの、自家製野菜とお肉のバルシチ(ビートのスープ)とポーランド風ロールキャベツを食べました。なんとも滋味深くおいしい!食事中に昨晩のナレフカ(果実酒)を勧められ、まだ自転車に乗らなくてはならないからと断るも、これから行く機織りのおばあちゃんはお母さんの知り合いだから、車で連れてってくれるという、ありがたいオファーに負け昼間から果実酒をありがたく頂きました。

さて、食事後2時間の休憩(昼寝)の後に、Ludgarda Sieńkoさん宅を農家のお母さんと一緒に訪ねます。ルドガルダさんは、ちょうど庭先で糸を紡いでいるところでした。その後仕事風景を見せてもらいました。

夕陽が差し込む機織り部屋に、年季の入った機織り機。そしてこの道50年というルドガルダさんの職人の顔。伝統的モチーフ、<命の木>というタイトルの絨毯
作り手の人柄が表れているような、素朴で、温かい絨毯

今回ヤノフの5人の機織り職人さんを訪ねましたが、みなさん高齢です。若者の伝統文化への関心が薄れてきているのと、機械織りの安い商品に押されて後継者がいなくなっています。実際に、仕事場を訪問してみて、とても時間と労力と技術のいる手仕事だということも、解りました。一方でヤノフの織物は、手仕事の価値そのものです。この価値をこの先の世代にも、どうにか受け継いでいってほしいと思います。SLOW ARTでも、日本のみなさんに実際にヤノフの織物をご覧いただけるよう、今後ご紹介する機会を持ちたいと思います。







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2010/07/29

織物の里 その1


最寄りの駅は25Km先。又その最寄りの駅にも、近くの大きな街からは一日に電車が4本しか来ないという、ポーランドの奥の奥の小さな村、Janów(ヤノフ)。しかし、ポーランド、ポドラシェ県の小さな村ヤヌフは、ポーランド伝統工芸の世界では、ちょっとした有名な村です。ここには、今も伝統の織物を織り続けるおばあさんたちがいます。今回の旅では、ヤノフの織物を継承する5人の職人さんを訪ねました。

Teresa Pryzmontさん。前の日に行ってもいいですかとお願いしたのに、快く迎え入れてくれました。自家製のコンポートに、ポテトパンケーキまで用意して。「さぁさぁどうぞ、これは、私の宮殿よ」と、案内されたのは、大小3台の機織り機が並ぶ、なんとも温かい、工場(こうば)。地元の小学生なども見学に来るという、テレサさんの仕事場で、ヤノフの織物ができるまでのお話が始まります。

ヤヌフの織物は、羊毛の織物です。羊毛の汚れや、ごみを落とし、よく洗い、乾かします。

糸紡ぎ車で、手と足で羊毛から、細い糸を紡ぎだしていきます。この糸車は100年ほど前のもの。
古いほうが、使いやすいのだそう。

ボビンに紡ぎとられた糸。このボビンをひとつ紡ぎあげるのには1日かかるそうです。
その後、機織り用に、この糸を2本どりにします。これで、又半日。ここまで、こだわり、時間をかけて、羊毛から糸を紡ぐ職人は今は、ヤノフでも3人だけです。まさに、手仕事の極みです。

その糸を染色して、伸ばし、毛糸玉にします。

ここまでで5日以上かかるそう。

これでやっと、織りが開始できます。ヤノフの織物は、表裏2面の糸を交替させながら織る2重織りです。表も裏も、色違いの同様の模様を楽しめます。糸を交差、浮沈させながらモチーフを織りだしていくのですが、1ライン(糸一本分)を織るのに3分くらいかかります。又、この年代物の、機織り機が重い! 本当に、根気のいる職人の仕事です。こうして、クッションサイズのものから、絨毯や、タペストリーなどを織りあげます。

壁一面に飾られた、テレサさんの作品の数々

壁のタペストリー。村の生活を描いたもの。<冬>

こちらは、ヤノフに伝わる、伝統の柄

壁には、テレサさんの勲章の数々

昔は、ポーランドの多くの村々にもあった、民芸品の織物は、今では、なくなりつつあります。機械織りの絨毯は、安くてきれいだけれど、ここで触れた、手仕事の価値をもつ絨毯には、決して及びません。糸を紡いで、染色して、時間をかけて織りあげた、織物には、職人の思いも込められています。
次の記事では、他の職人さんを訪ねます。






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2010/07/26

農家の夕べ


今回の旅では、ぜひ機織りをしているおばあさんたちの村を訪ねたかったのですが、何せ最寄駅が25km先だという、奥まった村だったため、村の中にペンションなどがなく、困っていたところで、見つけたのが、Agroturystyka (アグロツーリズム:田舎の農家などが余っている部屋を観光客用に貸して、田舎の暮らしや農家や牧場の体験をさせてくれる)をしている、農家。電話をしてみると、電話口に出た、おばあちゃんは、即OKとのこと。しかも、2人100zl(3000円程度)で、朝、昼、晩御飯付き! 田舎とはいえ、なんて良心的なんだろう!!

当日は、すでに55km程霧雨のなか自転車で走り続けました。予約をしたときに、書いてあった住所の近くに行ってみると、なんだか、様子が違う。そこで、電話をすると、そこからさらに、20km離れた村に本家があるという。すでに、その時点で19時近く。夏のポーランドは、21時近くが日暮れだとはいえ、これからさらに20kmと知った時の落胆と日暮れまでに着けるかという、焦り・・・・

ただ、そこから20kmの農家までの道のりは、今まで見てきた景色の中で一番美しいものでした。一本道のポプラ並木を抜け、丘を登り、森をいくつか抜け、そして平原にでて、

そこは、一面、見渡す限り、夕陽をあびた黄金の小麦畑。民家は、20kmの間、遠くのほうにあるものを入れても数える程度。途中、犬に追いかけられ、ブヨに襲われましたが、、、それも又田舎サイクリングの醍醐味なり。


なんとか、日暮れ少し前の20:40に到着しました。待っていてくれたのは、Moniuszko(モニウシュコ)家のお父さんと、お母さん。家の一室がゲストルームになっており、お客は私たちだけ。モニウシュコ家は畜産農家の為、家畜を飼育していて、ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉やチーズやバターなどの乳製品はもちろん、野菜やパンも全て食卓に上ったものは、自家製でした!どれも自然と大地の味がしてとても美味しかったです。ご飯を食べ終わると、お父さんが作ったという、ライ麦のウォッカでお母さんが、つけた果実酒がでてきます。この日は、自家製の豚足ハムをつまみにし、ライ麦ウォッカ片手に、モニウシュコ家のお母さんとお父さんと、旅のこと、日本のこと、農家のこと、ポーランドの田舎がきれいなこと、この間の大統領選挙のことなど、24時すぎまで、話が尽きませんでした。

次の日の朝、朝ごはんの後に仕事場見学。




養蜂のカラフルな巣

とても人がいいし、ご飯はおいしいし、ゆったりしているし、田舎のおばあちゃんのうちに帰ってきたような感覚でした。結局、1泊のみの予定だったのを延ばして、2泊してきたほどです。帰り際も、「もう1泊していきな」とか「又必ず来るんだよ」と言ってくれ、ポーランドに新たに、田舎が出来たようで、Agroturystykaの出会い、とっても嬉しかったです。次行く時は、ぜひ、ハム・ソーセージ作り体験をさせてもらう予定です!



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2010/07/25

コウノトリ観察記




ポーランドには、春先から、秋にかけ、多くのコウノトリ(詳しくは、くちばしが赤いシュウバコウ)がアフリカ大陸から渡ってきます。コウノトリたちは、春の訪れを知らせるとともに、子宝の象徴でもあります。豊かな自然や、伝統的な農法を今でも続けるポーランドには、世界中の1/4のコウノトリが飛来し、産卵、子育てをするといわれています。毎年、5月31日は<コウノトリの日(Dzień Bociana)>という日まであり、その年に飛来したコウノトリの観察会が行われたり、子どもたちへの自然教育の日でもあります。



今回私たちが旅した、マゾフシャ県やポドラシェ県は、森や湖などが多く、コウノトリの巣がそこここに見受けられました。自転車で旅をする醍醐味は、ゆっくりと草花を観察したり、自然を眺めたり、時には立ち止まって、コウノトリの巣を探したり出来ることです。そのうちのいくつかの出会いについて。

麦畑にて。刈り取られた後の畑で、昆虫や野ねずみを探すコウノトリ。屋根の上に巣を作るなど、人と共生している、コウノトリは、人が近づいてもあまり怖がりません。

牧場のコウノトリの巣。電柱に作られた巣の上から涼しそうに、牛たちを見降ろすコウノトリ

こちらは、私たちが泊ったペンションの敷地内のコウノトリの巣。ここの敷地内には、4つも大小の池があり、蛙が住んでいて、夜は大合唱になります。コウノトリにとっては、格好のえさ場。その為、毎年、ここの巣を求めて、何匹かのコウノトリのペアが奪い合いを繰り広げるそう(笑)。あいにく写真を撮った時は、餌を探しに出ていて、不在中。

こちらは、家の煙突の上に作られた巣のうえで子育て中。自分の家の屋根に、コウノトリが巣を作って住んでいるなんて、本当に子宝に恵まれそうです。屋根の上や木に巣を作るとよく言われる、コウノトリですが、最近は、電柱の上が一般的です。それだけに、屋根の上のコウノトリの巣は、やっぱりありがたい気がします(笑)


因みに、ポーランドには自分のうちのそばのコウノトリの巣がどこにあるのかを調べられるサイトや、Bocian-online (コウノトリオンライン)といって、実際にコウノトリの巣に設置されたオンラインカメラから24時間生中継で、コウノトリの子育ての様子を見ることができるサイトもあります。子どもたちが、成長する姿を目の前でみることが出来て、とても面白いです。卵の時から見守ってきた、コウノトリの子どもが旅立っていく姿など、自分の子どものようで、若干泣けます(笑)

http://www.salamandra.org.pl/home.html より。巣の中が丸見えのオンライン子育て中継。

切り絵のモチーフにもなっているコウノトリ。本当に、ポーランドの田舎の暮らしになじんでいるコウノトリ達。コウノトリは、自然や、伝統農法により守られている豊かな生態系を好む、環境指標生物でもあります。開発が進むポーランドですが、世界の1/4のコウノトリが飛来する美しい田舎の風景は決してなくなってほしくはないものです。




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2010/07/23

古民家ノスタルジア ~その2 東の風~



前回の記事でお伝えした、ポーランドの野外古民家博物館のつづき。今回旅したのは、ポーランドの東側の地域のみでしたが、それでも、よく見てみると、内装や家の作りが違います。








ワルシャワが県都でもある、Mazowsze(マゾフシャ)県(地図右中央の青い地域)と、ベラルーシとの国境、ポーランドの北の東の端、Podlasie(ポドラシェ)県(地図右上のピンクの地域)の民家を比べてみます。

マゾフシェ県の古民家

昨日も、お伝えしましたが、祭壇は民芸の切り絵や紙の花で飾られています

ベッドにかかっていいたのは、今はなくなってしまったマゾフシャ県Tumanek(トゥマネック)の鮮やかな織物
Tumanekに伝えられた、伝統的な4つのモチーフで構成されています。

くす玉のような天井飾り

悩めるキリスト像を祭ったカトリックの小さな祠

一方、ベラルーシとの国境が10km先にあるという、ビャウォヴィエジャの森周辺の古民家では、内装やチャペルに、ベラルーシ(ロシア)の強い影響が見て取れます。

博物館に移築された、昔の農家の家。木造、茅葺(かやぶき)屋根の家です。
北東に位置するこの地域の家ですが、冬の寒さは、どんなものだったのでしょうか・・・

部屋の祭壇。イコンにかかっているのは、rushniky(ルシュニキ)。刺繍と、レースで飾られており、ベラルーシやウクライナでは、宗教上の祈りの布として、民間に広まりました。イコンを包むように、かけます。

キリル文字が書かれた、刺繍布(因みに、ポーランドは、アルファベットです)

風車小屋。小麦粉をひいたり、菜種油を絞ったりしていました。

写真では、小さくて分かりづらいのですが、右端の十字架は、ロシア正教会の十字架です。このチャペルは、ロシア正教会のもの。ポーランドは国民の90%が、カトリック教徒の国といわれますが、北東の、ポドラシェ地方には、カトリック教会、ロシア正教会、ユダヤ教のシナゴグ、モスク(ポーランドタタール人の為のもの)が混在しています。道路沿いの宣伝用の看板もキリル文字で書いてあったり、土地の人のポーランド語もロシア風なまりがあったりと、東の影響を強く感じます。

昔の田舎の人々の暮らしや、文化をを垣間見ることができる、郷土博物館。古民家ノスタルジアでした。







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