2011/02/28
<白い森と日本の意外な共通点>6つのタマゴの物語4
<東欧イースターエッグの世界展>開催に向けお届けしている6つのタマゴの物語(プロローグへ 第1話へ 第2話へ 第3話(その1)へ 第3話(その2)へ)。
今日の東欧イースターエッグ小話は、所変われば、作り方も変わるという、日本人にも身近なあるものを使って作るポーランド・クルピエ地方のイースターエッグの話。
このイースターエッグに出会ったのは、去年の夏クラクフで行われた民芸市でのこと。
ポーランド北部、Kurpie・Puszcza Biała /クルピエ・プシュチャビアワ(白い森という意味)地方から来ていたJulianna Pławska(ユリアンナ・プワフスカ)さん。本日のタマゴを作ってくれた方です。まず、民芸市で目を引いたのは、(イースターエッグ!ではなく・・)ユリアンナおばあちゃんの売店にかけてあった、この素晴らしい刺繍でした。
どこかで見たことがあると思ったら、去年自転車でポーランド各地を回ったときに訪れた民芸博物館でのひときわ刺繍が美しいプウトゥスクの民族衣装。
ユリアンナさんもPułtusk(プウトゥスク)という村の出身です。これは、18世紀から続く村の伝統的な刺繍。この刺繍のこと、自転車での旅のことなどをユリアンナさんの店に入り込んで話していると、あるアルバムを見せてくれました。ポーランドやヨーロッパ各地で行われる民芸フェスティバルに出展したときの写真でした。そこに写っていたのが、今日のクルピエ地方のタマゴでした。
今まで、ご紹介してきたろうけつ染めでも、エッチングでも、エンボス細工でもない、見たことのないイースターエッグ。。ビロード状のふわふわとした白いヒモ(外側は白い粉が吹いているようで中は半透明、、あんみつの上にのっている白いぎゅうひみたいなんです)が巻きつけてあります。はて、これはなんだろう。。。
ユリアンナおばあちゃんにこれは何?とたずねたところ、「ポーランド語でsitowieという草よ」との答え。草!?このビロード状の物体が<草>なことにまず驚き、sitowieが頭の中をぐるぐると回ります。。果たしてどんな<草>なんだろうか。その草の正体がわからぬまま、とりあえず展覧会用にとイースターエッグを注文して、うちに帰ってきました。
さっそく、sitowieについて調べたところ、日本語ではホタルイ属の植物とのこと。。植物にはあまり明るくない私ですが、ホタルイ属の説明に、イグサ(!)という記述を見つけました。これは、もしかして!
そう、ポーランドクルピエ地方のこの変わった装飾のイースターエッグは日本では畳でおなじみのイグサ、とりわけイグサの髄で作られたものだったのです。
調べてみると、日本でもイグサには灯芯草(とうしんそう)という名前もあり、スポンジ状のイグサの髄を取り出し、和紙を巻いて作る和ろうそくの原料でもあることがわかりました。イグサの髄がこんなビロード風のスポンジ状のヒモだったなんてことに、まず驚き、その日本人の生活に密着しているイグサがポーランドの小さな村のイースターエッグに伝統的に使われていたなんてことにも2重に驚きました!
だから、冒頭にある「所変われば作り方も変わるは」東欧各地域だけではなく、日本も含めた話だった(!)というワケ。
イースターが近い春の日、森と湿地帯に囲まれた白い森、クルピエ地方の人々は湿地帯に生えるイグサの茎を刈り取ります。イグサの皮を(上の絵のように)しごきながら剥ぐと、中からスポンジ状の髄が出てきます。それを日向にならべ乾燥させ、適当な長さに切りながらカラフルな毛糸と共にタマゴに巻きつけ装飾します。
ユリアンナおばあちゃんの、白い森・クルピエ地方のイグサエッグ。ポーランド人がイグサを使うとこうなるのかぁと感心します。ぜひ、実際にごらんにいらしてください!
<東欧イースターエッグの世界展>詳細:SLOW ART web
次は、民族文化が色濃いルーマニアブコヴィナ地方へ!
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2011/02/25
<ドイツ少数民族ソルブのタマゴを求めて2>
<東欧イースターエッグの世界展>開催に向けお届けしている6つのタマゴの物語(プロローグへ 第1話へ 第2話へ 第3話(その1)へ)。
(前回までの話)
写真左下のソルブのイースターエッグを求めて、ドイツに暮らすスラブ系少数民族、ソルブ民族の村シュライフェにやって来た私、民族博物館にてどうにかイースターエッグを作っているのおばさんの住所を入手、アポイントもないまま、ドイツ語もソルブ語もわからないまま(!)、アーティストのおばさんの家のチャイムを鳴らしたのでした。
チャイムを鳴らしてしばらくすると、出てきたのは大学生くらいの女の子。私が持っていた民芸博物館のイースターエッグの資料を見るなり英語で「タマゴ見に来たの?」だって(!)何たる安堵。言葉が伝われば、話も早い。自己紹介をして、ぜひソルブのイースターエッグを見せてもらいたい旨を伝えると、どうぞどうぞと家の中に通してくれました。今回訪ねたイースターエッグアーティストは、彼女のお母さん。
丁度ケルスティンさんも在宅でした。私が日本での展覧会のこと、ソルブのイースターエッグをどうしても購入したい旨を伝えると、ケルスティンさんは「今年のイースターマーケットの際の残りがあるから」と、地下のアトリエからたくさんの、それはそれは美しいタマゴを出してきてくれました。
ソルブのイースターエッグには、3通りの装飾技術、<ろうけつ染め><エンボス(カラーの蜜ろうを塗りつける方法><エッチング>のものがあると事前調査済みだった為「エンボスやエッチングのものはないでしょうか・・」とさらに図々しく突っ込む私に、「エッチングは作らないからないけど、エンボスのものだったら今少ししかないから、又戻ってこれるんだったら、明日までにできるだけ作っておいてあげるわよ。」ですって!嬉しいなぁ。ツイてるなぁ。もちろんお願いしました笑。
気が大きくなった私は、「作るところも見せてもらえませんか!?」とさらにお願い。ケルスティンさんは、「いいわよ。いいわよ。」といって、地下の工房に案内してくれました。
スプーンに入っているのは、色をつけた蜜ろう。赤に、青に、ピンクに、緑に・・ソルブの色です。それを、下からロウソクの熱でゆっくりと溶かします。
これは、デコレーションに使う筆。ガチョウの羽の先をさいて筆先を整えてあり、一定の模様が描けるように作られています。
その筆先に溶かした蜜ろうをつけ、スタンプを押すような感覚で模様を描きます。ケルスティンさんはとても早く絵付けをしているように見えるのですが、これ本当に、力加減やまっすぐ線を書くこと、均一に蜜ろうを塗りつけることなど、とっても難しいんです。
この続きは、動画でどうぞ!
色々な筆を使って、丁寧に模様を描いているのがわかります。ケルスティンさんは毎年イースターフェアの際には何百個ものイースターエッグを作るそうですが、一つとして同じ模様は存在しないんだとか。職人っていうのは、こういうコトだなぁと関心。皆さんも、日本での企画展にお越しの際には、ケルスティンさんのイースターエッグ、様々な模様や色を注意深く御覧ください。
ところで、ドイツに住む少数民族のソルブ民族。ケルスティンさん一家もソルブの血を引く家庭なのですが、家庭内はドイツ語で話し今ではほとんどドイツ人の一般家庭と同じ暮らしです。
「ソルブ語は話さないんですか?」と聞いたところ、娘さんは「おじいさん、おばあさんの代は話していました。その後東ドイツは共産主義になりドイツ語教育がなされ、父・母の代ではソルブ語が話されなくなり、共産主義の終りと共に、今又学校や文化センターではソルブ語や文化教育が盛んになされるようになりました。ただ、親の世代が話さない言語を子供たちが話すことは、あまりありませんね」とのこと。時代に翻弄されて、今一つの言語がなくなってしまうのか。。どうにかして食い止めてもらいたいものです。
<東欧イースターエッグの世界展>では、ケルスティンさんのろうけつ染めとエンボス細工のタマゴの他にも、宝石のカッティングのように美しいRainer Grosa (ライネル・グローサ)さんのソルブ民族のエッチングエッグも展示予定です。Rainerさんを訪ねた話は、また別の機会に。。
<東欧イースターエッグの世界展>詳細:SLOW ART web
そうそう、イースターマーケットの為に何百個もつくるイースターエッグ、中身はすべて抜いてあります。中身どうするの?と聞いたところ、お酒にするのだそう。それを、次のイースターまで家族や、ご近所、お友達と楽しむのだとか。なるほど、タマゴ酒にもとても興味がでた、SLOW ARTでした。
次回は、ポーランドの驚きの方法で作るイースターエッグをご紹介します!
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ソルブのイースターエッグには、3通りの装飾技術、<ろうけつ染め><エンボス(カラーの蜜ろうを塗りつける方法><エッチング>のものがあると事前調査済みだった為「エンボスやエッチングのものはないでしょうか・・」とさらに図々しく突っ込む私に、「エッチングは作らないからないけど、エンボスのものだったら今少ししかないから、又戻ってこれるんだったら、明日までにできるだけ作っておいてあげるわよ。」ですって!嬉しいなぁ。ツイてるなぁ。もちろんお願いしました笑。
気が大きくなった私は、「作るところも見せてもらえませんか!?」とさらにお願い。ケルスティンさんは、「いいわよ。いいわよ。」といって、地下の工房に案内してくれました。
ケルスティンさんのアトリエでソルブ民族のイースターエッグ作りがはじまります。
スプーンに入っているのは、色をつけた蜜ろう。赤に、青に、ピンクに、緑に・・ソルブの色です。それを、下からロウソクの熱でゆっくりと溶かします。
これは、デコレーションに使う筆。ガチョウの羽の先をさいて筆先を整えてあり、一定の模様が描けるように作られています。
その筆先に溶かした蜜ろうをつけ、スタンプを押すような感覚で模様を描きます。ケルスティンさんはとても早く絵付けをしているように見えるのですが、これ本当に、力加減やまっすぐ線を書くこと、均一に蜜ろうを塗りつけることなど、とっても難しいんです。
この続きは、動画でどうぞ!
色々な筆を使って、丁寧に模様を描いているのがわかります。ケルスティンさんは毎年イースターフェアの際には何百個ものイースターエッグを作るそうですが、一つとして同じ模様は存在しないんだとか。職人っていうのは、こういうコトだなぁと関心。皆さんも、日本での企画展にお越しの際には、ケルスティンさんのイースターエッグ、様々な模様や色を注意深く御覧ください。
ところで、ドイツに住む少数民族のソルブ民族。ケルスティンさん一家もソルブの血を引く家庭なのですが、家庭内はドイツ語で話し今ではほとんどドイツ人の一般家庭と同じ暮らしです。
「ソルブ語は話さないんですか?」と聞いたところ、娘さんは「おじいさん、おばあさんの代は話していました。その後東ドイツは共産主義になりドイツ語教育がなされ、父・母の代ではソルブ語が話されなくなり、共産主義の終りと共に、今又学校や文化センターではソルブ語や文化教育が盛んになされるようになりました。ただ、親の世代が話さない言語を子供たちが話すことは、あまりありませんね」とのこと。時代に翻弄されて、今一つの言語がなくなってしまうのか。。どうにかして食い止めてもらいたいものです。
<東欧イースターエッグの世界展>では、ケルスティンさんのろうけつ染めとエンボス細工のタマゴの他にも、宝石のカッティングのように美しいRainer Grosa (ライネル・グローサ)さんのソルブ民族のエッチングエッグも展示予定です。Rainerさんを訪ねた話は、また別の機会に。。
<東欧イースターエッグの世界展>詳細:SLOW ART web
そうそう、イースターマーケットの為に何百個もつくるイースターエッグ、中身はすべて抜いてあります。中身どうするの?と聞いたところ、お酒にするのだそう。それを、次のイースターまで家族や、ご近所、お友達と楽しむのだとか。なるほど、タマゴ酒にもとても興味がでた、SLOW ARTでした。
次回は、ポーランドの驚きの方法で作るイースターエッグをご紹介します!
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2011/02/24
<ドイツ少数民族ソルブのタマゴを求めて1>6つのタマゴの物語3
<東欧イースターエッグの世界展>開催に向けお届けしている6つのタマゴの物語(プロローグへ 第1話へ 第2話へ)。
本日は、ドイツに住むスラブ系少数民族・ソルブ人のイースターエッグを求めてポーランド国境の西へ向かいます。
ソルブ人というのは、ドイツのポーランド、チェコ国境地域に住む西スラブ系(ポーランド、チェコ、スロバキアなど)の少数民族。ドイツのゲルマン系民族とは違う歴史や文化をもち、ドイツ語ではなくソルブ語という独自の言語を持っています。言語や文化などは同じ西スラブ系の国々と共通する部分もとても多く、本日の話でもあるソルブ人のつくるイースターエッグもスラブ系民族の伝統を引き継いでいます。
←これは、ソルブ人が住む地域を表したドイツの地図。ここに現在は6万人のソルブ民族が暮らしています。
これは、道の名前が書いてある看板。ソルブ民族の住む地域にはこうしてドイツ語(上)とソルブ語(下)の2言語で表記がなされています。(なぜこの道かって?!・・SLOW ARTのオフィスが登録されているポーランドの道(Młyńska=水車小屋 通り)と同じ名前だったから・・これからもソルブ語とポーランド語が似ているっていうのがわかるでしょ;))
さて、各地のイースターエッグ集めをしていた去年10月。展覧会にはどうしてもソルブ人の美しいイースターエッグを出展したい・・それにドイツに住む少数民族なんてすごく面白い!と興味と好奇心の赴くままに、とくにこれといった仕入先のあてもないまま、クラクフから高速道路A4にのり(ボレスワヴィエッツで陶器工場などを見学した後、)国境をこえSchleife/Slepo (ドイツ語でシュライフェ・ソルブ語でスレポ)というポーランド国境からわずか18kmのソルブ民族の村にやってきました。
度重なる戦争や王室の変化などで国境が西に東に、時には国がなくなってしまうという歴史を経てきたヨーロッパ。ソルブ民族たちも今はドイツ人としてドイツの領土に住んでいますが、国境から18kmの村は色々な国の歴史に翻弄されてきたのだろうと思わずにはいられません。
仕入先のあてがなくても、「まずは民族博物館へ。」がSLOW ART旅の鉄則。シュライフェは小さな村ですが、ソルブ博物館がちゃんとありました。
民族博物館には、もちろんありましたよ。ソルブのイースターエッグの数々。嬉しいことに作者名と出身地まで一緒に書いてありました。そこで、特に目に留まったいくつかのタマゴをピックアップして受付のおばさんに身振り手振りで「コノヒトノ ジュウショト レンラクサキ オシエテクダサイ!」とお願いします。イエローページを調べだすおばさん。。博物館の出展者ダイレクトリーとかないんですね・・
ほどなくして、私がお願いしたエッグアーティストの人の住所をゲット。ここまではとてもスムーズに来ています。
さて、これからが問題。果たしてアポ無しで訪ねていって、ドイツ語もソルブ語もわからぬ日本の娘を家にあげてくれ、タマゴを買わせてくれるのだろうか・・・だいたい、イースターの時期でもない10月に買えるだけのイースターエッグがあるのか。それにこんな平日の昼間に家に訪ねて言ったところで、家にいるの??!・・
不安が募ります。。
そして、アーティストのおばさんのうちのチャイムを押しました。
その後思いがけない展開へ!明日に続く・・・・
今回買い付けに行った、ソルブのタマゴはもちろん、<東欧イースターエッグの世界展>でご覧になれます。他の東欧の色使いとはまたすこし違った趣きのある、ソルブ民族のイースターエッグ。これもドイツのスラブ系少数民族という歴史や文化からかなぁとも思います。ぜひ実際に見にいらしてください!(販売もしてます)
<東欧イースターエッグの世界展>詳細:SLOW ART web
明日もソルブ民族の話とイースターエッグの写真満載でお届けします。
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2011/02/22
<最古の模様に隠された秘密> 6つのタマゴの物語2
<東欧イースターエッグの世界展>開催に向けお届けしている6つのタマゴの物語(プロローグへ 第一話へ)。
今日は、このタマゴ。他のカラフルなタマゴに比べると、茶・黒・白を基調としどこか神秘的な雰囲気が漂います。中央に立っているのは、シャーマンの女性、それを囲むのは繊細な線と蛇腹模様。。。。<イースター>エッグなのに一体なぜ・・
それでは、不思議な模様に隠された秘密にせまりましょう。
このタマゴに隠された謎を読み解く鍵は
このハニワや
日本の縄文時代(新石器時代)のハニワや土器にとても似ていると思いませんか?実は、これらはウクライナのトライピリアン文化遺跡(wikipedia)から出土した、ハニワや土器なのです。トライピリアン文化は、BC5500~BC2750頃、現ウクライナのカルパチア山脈一帯からルーマニアのドニエプル川までの間に広がる3500km2の広大な山脈と草原と森に囲まれた地域で発展した、欧州における最初の文明とも言われている新石器時代の文化です(wikipediaに日本語版がないので、日本ではもしかしたらほとんど知られていないかもしれないです)。
この土器に描かれた線や円、蛇腹模様、ハニワなどは、ウクライナ最古のデザインということができるでしょう。このデザインをウクライナのピサンキ(ウクライナ語でイースターエッグ)アーティストたちがイースターエッグに描き出したのは、比較的最近のコト。自国の起源でもあるデザインを、これも又ウクライナの古い伝統文化であるピサンキ(イースターエッグ)に描くことで、ウクライナという国のアイデンティティを確認しているようでもあります。
描かれているシンボルやモチーフには意味もあります。「蛇腹模様」などで表されている蛇は、厄除。このモチーフを描いたタマゴを伝統的なウクライナの家庭では軒下に埋めて、家内安全を祈ったりもしました。又、タマゴをぐるりと取り巻く「波模様」は終わりも始まりもないことから、永久(とわ)や永遠をあらわしています。その他にも、描かれる動物や幾何学模様にも様々な意味があるんです。
今回<東欧イースターエッグの世界展>に出展しているトライピリアンエッグを作ってくれたのは、ウクライナのピサンキアーティストであるHalyna Kovalenko(ハリナ・コバレンコ)さん。クラクフで去年の夏に行われた民芸フェスティバルで見た彼女の素晴らしいイースターエッグの数々に私は一瞬で目を奪われたのでした。
ダチョウのタマゴに描かれたトライピリアン模様
派手ではないけれど、神秘的で人を引きつける魅力をもつ彼女のトライピリアンエッグは、本当に素晴らしい芸術品です。
企画展では、ウクライナピサンキ(イースターエッグ)のシンボリズムを読み解くより詳しい解説なども用意しています。ウクライナ最古のデザインと神秘、トライピリアンエッグをご覧にぜひ、いらしてください!
<東欧イースターエッグの世界展>詳細:SLOW ART web
次回:ドイツに住むスラブ系の少数民族<ソルブ民族>のコトをご存知ですか?彼らが作る素晴らしいイースターエッグを求めて、西に向かいます。
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2011/02/21
<ポーランド一素敵な>村へ 6つのタマゴの物語1
東欧イースターエッグの世界展では、東欧5カ国、18地域、22種類数百点のイースターエッグを展示予定です。その中から、当ブログでは、6つのタマゴについて、その芸術に込められた物語をお伝えします。
6つのイースターエッグの物語、本日はこのエメラルドグリーンに染められたタマゴにほどこされた花模様のエッチングが素晴らしい、ポーランド・オポーレ地方のタマゴのハナシ。
私がこのイースターエッグ(ポーランド語ではPisanki/ピサンキ)に出会ったのは、去年の6月。プルドニックという小さい街で開かれた民芸市でのことでした。作者はEdeltrauda Krupop(エデルトラウダ クルポップ)さん。彼女のイースターエッグに見とれる私に、「私の村は、ポーランド一素敵な村なのよ。いつか来なさい。」と声をかけてくれました。東欧のイースターエッグ展の企画を考え出した去年8月、エデルトラウダさんのピサンキをぜひ出展したいと思い、彼女の住む<ポーランド一素敵な>村、Kamień Śląskiを訪ねました。
<ポーランド一素敵な>村は、ポーランド西南部オポーレ県にある小さな村。1945年まではドイツの土地として占領されていましたが、戦後ポーランドに返還されました。そのため、今もドイツ系の人々が多く住んでおり、村の道路などはドイツ名とポーランド名で表記されていたりします。素朴で小さな村ですが、森があり、立派な教会や修道院があり、昔貴族が住んでいた宮殿などもあります。ポーランドの素晴らしい村として国から選ばれたこともあるそうです。エデルトラウダさんが村を自慢するのもわかります。
突然の訪問にもかかわらず、温かく迎え入れてくれたエデルトラウダさん。自家製のお菓子が出され、お茶が運び込まれ尽きることのないハナシが始まりました。家族のこと、自分のルーツの話、村のこと、ポーランドの亡くなった大統領の話・・・小一時間後、サンドウィッチはどう?オビアッド(ポーランドのdinner)はどうするの?・・となったところで、、「あのーピサンキを見せてください・・」と本題へ。「そうだったわね!」とイースターエッグがたくさん用意されている奥の部屋に案内してくれました。
オポーレの伝統的なイースターエッグは、染色したタマゴの表面をカッターの刃で削り細かい模様を描いていく、エッチングが見事なタマゴです。タマゴは殻にあけられた小さな穴から、中身が出されて殻だけの状態です。それをやさしく持ち、丁寧に丁寧に削って模様をつけていきます。(間違えたら取り返しが付かないので、とても集中力がいる作業でもあります)
「又来るのよ」「きっと又すぐ来ますよ。次は展覧会のお知らせをもって」と言い残し、エデルトラウダさんの家を後にしたのでした。先日日本での展覧会のお知らせをしたところ、とても喜んでくれました。又春になったら、<ポーランド一素敵な>村へ行こう。
エデルトラウダさんのイースターエッグは<東欧イースターエッグの世界展>で展示販売します。エデルトラウダさんの作品を実際に見にいらしてください。3/4東京チェドックから全国を順次巡回します!
<東欧イースターエッグの世界展>詳細:SLOW ART web
帰り道、石炭を積んだ何十両編成もの貨物列車に20分以上足止めを食う。これもゆっくりとした時間がながれる、ポーランド田舎の村の醍醐味なり;)
次回は、ウクライナ最古のイースターエッグを求めて。
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