開催中のヤノフ村の織物展、もう一度村の各織手さんをちゃんと紹介したく、以前掲載した記事と今年の新作の写真をあわせて記しています。
本日は~5人の織り手を訪ねて~の続き(前回の話はコチラから)
Filomena Krupowicz(フィロメナ・クルポヴィッチ)さん
フィ ロメナさんが、織物を始めたのは結婚して夫の家に嫁いできてからのこと。フィロメナさんの義母のScholastyka Krupowicz(スホラスティカ クルポヴィッチ)から織りを教わったそうです。スホラスティカさんはポーランドの民芸品評会で最優秀賞を受賞するな どとても有名な織り手でした。フィロメナさんは言います。
「こ この家に嫁いできた時、義母が私に織物を教えてくれました。最初はとてもむずかしくて複雑で何をどうしていいやら、すぐに投げ出したくなったの。そうした ら、義母は「「まずは、機のまえにすわって想像してご覧なさい。ここには木やトリ、村の人たちの笑顔が自然に出てくるから」」といいました。そうして二人 で最初のタペストリーを織り上げました。」
ヤノフの織物には図案がありません。代々技術やモチーフは人の手から手に伝えられてきました。フィロメナさんの織る村の生活を描いた織物は楽しく、やさしい表情の人々がとてもスホラスティカさんのものに似ています。
Danuta Radulska(ダヌータ・ラドォルスカ)さん
ダヌータさんもヤノフの織物を始めたのは、結婚後ヤノフに嫁いできてからでした。ダヌータさんのお母さんも糸紡ぎや織物をしており、小さい頃から織物には親しんできましたが、違うタイプの織物であったため、 ヤノフの2重織りの技術は、嫁ぎ先の村のテレサさんから教わったそうです。はじめて織ったのは80cmx2mの特大タペストリー。森や人、動物や伝統的な幾何学模様などすべての要素を教わりながら織り込みました。
ダ ヌータさんの織物をしている様子の動画があるので、ご覧下さい。大きな機をバッタンバッタンと前後して横糸を引き締める作業の迫力のあること。大変な作業 です。2重織りの特徴である上下に張られた縦糸を交互にすくいとっていき、模様を描き出していく様子などもよくわかります。
動画の中でダヌータさんがおっしゃっていますが、まずは頭の中でデザインをしっかりと組み立てること。そうして一気に織り上げるそうです。
ダ ヌータさんが企画展用に織ってくれた織物。カバンも今回は作って頂きました。色や模様がとても素敵です。ちなみにカバンについている木のボタンはダヌータ さんの旦那様がつくってくれたんですよ。どこまでも手作りな温かいカバンです。また、3枚目の大きな織物は1800年代の織物の柄をお願いして復刻しても らったものです。貴重な柄の織物です。
今年(2014年)は、両面織りのクッションをたくさん作っていただきました。裏表違う柄でとてもかわいいものばかりです。ダヌータさんの織物は色がとても素敵です。糸の染色も織手が行っているヤノフ村の織物は、色の出し方も織手それぞれです。ダヌータさんの織物は優しい色合いの織物が多く、とくに緑の織物は種類が豊富です。今年(2014年)の新作で、上にあるショパンの織物がありましたが、これもダヌータさんが図案から考えたオリジナル作品です。ポーランドはショパンの国。ヤノフ村ならではのショパンの表現方法がとてもユニークでかわいらしい織物です。
Alicja Kochanowska(アリチヤ・コハノフスカ)さん
ア リチアさんは昨年ビドゴシチで行われた<ポーランド織物コンクール>で最優秀賞を受賞しました。このコンクールは、伝統的な織物だけではなく現代の織物も 含めた大きなコンクールでしたが、伝統的な織物を受け継ぐヤノフの織物の織り手が最優秀賞を受賞したにはとても意味があると思います。
ア リチアさんはヤノフでも有名な織り手Genowefa Zaleskoさんについて織物を習いました。Cepeliaやポーランド各地で展覧会を開催してきました。アリチアさんは手仕事の大変さや尊さをつたえ るため、ポーランド各地で開催される展覧会や民芸市に工房にある小さな機を解体して持って行きます。私が去年訪れたルブリンの民芸市でもアリチアさんが ワークショップを開いており、2日間の織物教室はすぐに満席になっていました。こうして、ポーランド国内に少しでもヤノフの織物に興味をもつ人が増え、後 継者が育つといいのですが。伝統の継承も、今の織手達の重要な課題なのです。
とても人気があった、アリチアさんの鹿柄のタペストリー
以前ご紹介した、「春」のタペストリー。春夏秋冬のシリーズのひとつだとお伝えしましたが、こちらは「夏」。輝く太陽、夏にコウノトリ、涼し気な水辺、花咲く木にハチが舞い飛ぶ風景です。(コチラの織物は展覧会では販売していません)
こちらも106x133cmの大作。中に織られているのは、ヤノフの伝統的な木の文様。外のアリチアさんオリジナルのバンビとのコンビネーションがとてもかわいらしい作品です。
こちらは、上の大作と同様のテーマの比較的お求めやすい小さい作品。
彼 女たちは300年以上にわたって続いてきた織物を継承している織り手達です。その技術やモチーフ、色使いなどは長い時を経て洗練され一人ひとりの織り手 の手に託されてきました。伝統工芸品の重要な点はまさにそこにあります。現代の織手たちは、個人の芸術家として仕事のほかにも、昔のひとたちが試行錯誤して 磨き上げてきたものを伝承するという重要な仕事を任されています。何百年にもわたり伝えられてきたものには、意味があり思いがあります。その意味や思 いを無視せず、尊重することでより良いものが出来上がるのだと再認識しました。
安さや手軽さに惑わされて伝統文化を軽視しないこと。それがモノであふれる現代の私達にとって大切なことです。ヤノフの織物が次の世代にもどうか繋がりますように。
ここにご紹介した織物の一部は、浅草チェドックで開催中の「ヤノフ村の織物展」で展示販売しています。また、チェドックさんのウェブショップでも数点、取り扱いをして頂いていますので(今週木曜日にも更新予定)、どうぞ覗いてみてください。
チェドックザッカストアWEBSHOP:http://cedokzakkastore.net/
期間:1月7日(火)-1月26日(日)
■チェドックザッカストア浅草■
-3Fギャラリー・ハーチェク-
東京都台東区駒形1-7-12
Tel:050-3596-9500
営業時間:12:00-19:00
定休日:期間中休みなし
SLOWART在廊:26日(日・最終日)
ご質問、ご要望、ご注文、織手さんへのメッセージなどなどありましたら、ぜひお声をおかけくださいませ。
もちろん、メールなどでもお問い合わせください。
info<アットマーク>slow-art.pl
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