今日も昨日に引き続きパンと小麦粉の話
昨日はポーランド人がいかにポーランドのパンを愛しているかという話だったのですが、今日はポーランドで日本のパンを作るにはどうしたらいいのかという、私にとってより切羽詰まった実用的かつ個人的な問題の話です。。
昨日も少しふれましたが、パンを作るには小麦粉から。
●日本の小麦粉の分類はタンパク質の割合とグルテンの性質によって(薄力粉、中力粉、強力粉)と分かれています。
●一方ポーランドの小麦粉は小麦粉の挽き具合、要するに小麦の外皮がどれだけ含まれているか、ということでタイプごとに450-2000まで分かれています
スーパーなどでよくみかける小麦粉。右下にtyp550とあるのがタイプのこと。その下はPszenna(小麦)と書いてあります。
ポーランドの小麦粉は外皮が含まれている率で分けられていると書きましたが、これを灰分率というそうです。タイプごとの灰分率と、日本の小麦粉どうようそこに含まれるグルテン率(タンパク質)を表にしてみました。
なんぞや、って感じですよね。注目は、どちらの国の小麦粉もグルテン率は上がっていきますが、ポーランドの粉は灰分率も一緒にあがり、日本粉は灰分率が一定であるということ。
それぞれの成分の働きについて
●グルテン(タンパク質)・・・タンパク質多ければ多いほど水を加えて練った時に粘り気が出、グルテンが形成される。グルテンはパンの粘り気(モチモチ感)と、弾力(フワフワ感)を演出する存在。グルテンが形成されるとパンの膨らみも増す。
●灰分・・・小麦の外皮の混合率。灰分が多ければ多いほどミネラル分がまし香り、栄養価が高くなる(お米でいうと玄米)。小麦の中心部を使った灰分の低い小麦粉ほど良質なグルテンが含まれている。(日本では、このことから灰分の低い小麦粉ほど良質・一等とみなされている)灰分率が高い全粒粉に近づくほどパンは水を多く含み重くどっしりとした食感になる。
どういった性質のパンを作りたいかで、このグルテン率と灰分率の割合が大変重要になってくるようです。パンの種類別でみてみましょう。
ポーランドの小麦粉タイプ1050番とライ麦粉(ライ麦粉は小麦粉のようにグルテンを形成しない)をまぜた、香り・栄養価ともに高いどっしりパン
(灰分大・グルテン少)
外の皮の香ばしさとなかのモチモチがおいしいフランスパン
(配分0.5%・グルテン率10.7%くらい→550番が相当かな)
日本の最強力粉で作るふわっふわ・もちもちの食パン
(灰分最小・グルテン最大)
ポーランドの550番(中力粉レベル)や650番(準強力粉レベル)で日本風のパンを焼くことはもちろん出来ます。ただ、膨らみとフワフワ感がまだどうも足りないのです。グルテンが少し足りないし、灰分が邪魔をしているよう。
さてここで問題:「ポーランドの小麦粉を利用して、日本の小麦粉風のアレンジをきかせた食パンを作るにはどうしたらいいか」
答え:「浮き粉を使う」
浮き粉は小麦粉のグルテン成分を集めた最強グルテン粉。ポーランド語ではgluten pszenny(小麦グルテン)といいます。
要するに灰分率低めの(550番くらい=日本の2等級相当)ポーランドの小麦粉をベースに、グルテン粉でグルテン率を13%近くまで一気にあげてやればいいのだということ。
グルテン粉は一般的にはスーパーであまり見かけませんが、ビオショップやネットショップで売っています。マクロビでもよく使うセイタン粉という扱いだったりもします。
結論:
「もちろん、作るパンの種類や性質にもよりますがまずは小麦粉の分量に合わせて3%の割合でグルテン粉を混ぜてみるといいようです。パンはより膨らみ、フワフワ感がましますよ。食パンほど膨らまなくてもよい菓子パンなどの場合は450番にグルテンを混ぜるのがいいかもしれません。」
今回は、色々と調べてこういった結論に行き着き、なんとかポーランドで日本のパンが焼けそうです。が、やっぱり地産地消。無理をせず、土地のものはその土地の食べ方をするのが一番合っているということです。ポーランドのチーズもハムもやっぱりポーランドの香り高いどっしりパンが一番合っていて美味しいです。
ウォッカを飲みながら、ライ麦の黒パンとピクルスを食べるのもまた良し。
ポーランドへお越しの際は、ぜひポーランドパン食べてくださいね。
ポーランドへお越しの際は、ぜひポーランドパン食べてくださいね。
まぁ、どうしても私のように時々海外生活で食べ物欲求不満になっちゃう人は、今回の件、お試しください。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。
尚、今回の記事、素人考察ですので間違いなどありましたらご指摘お願いします。
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力の入ったレポートをありがとうございました。論理的かつ謎がほぐれていくような爽快感を味わいながら、読ませて頂きました。そしてこちらまでお勉強しちゃったという達成感がありました。一昨年と昨年、ロシアのシベリア鉄道に乗って旅をしたときに、ロシアの黒パンを楽しみにしていたのに、鉄道の旅ということもあってか、ロシアの田舎のパンを充分に楽しむところまではいきませんでした。その土地のパンの様子はやはり、その土地での暮らしに触れないと、様子がわかりません。食べ物の異文化は興味津々です!
返信削除SLOW ART BLOGに巡り会えてよかった!
これからゆっくり過去のブログを拝見しま〜す。
Noir Chanさん
返信削除ありがとうございます!そう言って頂けると、調べ物をした甲斐があります。
シベリア鉄道に2年も乗られているとのこと!とてもうらやましいです。私の夢はポーランドのワルシャワからウラジオストクまでシベリア鉄道で大陸を渡って一度日本に帰ることです。シベリア鉄道も停車駅ごとに、地元の売り子さん達が果物やピロシキなんかを売りに来ると読みました。鉄道でもそうした楽しみがあるのは楽しいですよね。その土地に行くと、その土地のものがとびきり美味しく感じます。普段ウォッカなど飲まないのに、冬のポーランドに来てウォッカと温かいスープで体が温まりウォッカが大好きになって大量におみやげで持って帰ったのに、日本に帰ったら美味しくもなんともなかったと言うことはよくあります。
話がそれてしまいましたが、異国の暮らしと食べ物はどこの国への旅行でも一番の醍醐味ですね。
シベリア鉄道の延長でぜひポーランドにもお越しください!
こんにちは。
返信削除ポーランドの粉と日本の粉との違い、とっても興味深く読みました。というのは私は逆にポーランド風のパン(厳密に言えばロシア風と言った方がいいかもしれません)を焼こうといろいろな粉を試しているのです。
私はカナダ在住ですが、主人がベラルーシ出身でポーランドに近いのと、私が住んでいるところがポーランド人が多く居住しているエリアに近いのでポーランド系の食料品店に行くとポーランドの粉が買えるという利点があります。
おいしいライ麦パンが焼けるようになるといいんですが、なかなか満足するようなパンは焼けません。
私もスラブ系の伝統的な工芸品などが大好きでこちらで展示会などがあると行くようにしています。こんなすてきなブログを見つけてとっても嬉しいです。またゆっくり読ませていただきますね。
ゆみ
Yumi Ozakiさん
返信削除こんにちは。コメントありがとうございます。
Ozakiさんはベラルーシ風のパン作りをなさってるんですね。外国に住んでいるとやっぱり自分の国のものがとても恋しくなりますよね。ご主人様のお気持ちとてもわかります。そういう私も日本に住んでいた頃は、ポーランド風のがっしりパンやソーセージなんかを求めて遠くのパン屋さんやお肉屋さんに買い物に行ったりしていました。
お近くで、ポーランドの粉が買えるというのは心強いですね。今回、粉の大切さを勉強しました笑焼くのはもっと難しいですが、おいしいパンを焼いてください。応援してます!
今後ともよろしくお願いします。
SLOWARTさん、パンと小麦粉について、とても詳しい素晴らしいレポートをありがとうございます!
返信削除娘がグルテンアレルギーだった時期、周りのポーランド人やパン屋さんに尋ねても
誰も的確な答えをくれなくて困っていたのですが、こちらの記事でポーランドパンや小麦粉の
謎を紐解いていただいた気分です。ありがとう!
これだけの調べ物をしていらっしゃるところを見ると、日本のパン禁断症状は重症のようですね(笑)
うまく日本風ふわふわ食パンが焼けますように!
ちぇこらどかさん
返信削除こちらこそコメントありがとうございます;)
Nちゃんのグルテンアレルギーは治りましたか?
子供が小さいうちは、食育で日本のものも、ポーランドのものも、
色々なものを味わえる舌を作ってあげたいですよね。
大人になると、特定の食べ物への欲求は強くなる一方です笑。
馴染んだものを食べるのは、外国ではある意味サバイバル術ですね。