
<東欧イースターエッグの世界展>開催に向けお届けしている6つのタマゴの物語(プロローグへ 第1話へ 第2話へ 第3話(その1)へ 第3話(その2)へ)。今日の東欧イースターエッグ小話は、所変われば、作り方も変わるという、日本人にも身近なあるものを使って作るポーランド・クルピエ地方のイースターエッグの話。
このイースターエッグに出会ったのは、去年の夏クラクフで行われた民芸市でのこと。
ポーランド北部、Kurpie・Puszcza Biała /クルピエ・プシュチャビアワ(白い森という意味)地方から来ていたJulianna Pławska(ユリアンナ・プワフスカ)さん。本日のタマゴを作ってくれた方です。まず、民芸市で目を引いたのは、(イースターエッグ!ではなく・・)ユリアンナおばあちゃんの売店にかけてあった、この素晴らしい刺繍でした。
どこかで見たことがあると思ったら、去年自転車でポーランド各地を回ったときに訪れた民芸博物館でのひときわ刺繍が美しいプウトゥスクの民族衣装。
ユリアンナさんもPułtusk(プウトゥスク)という村の出身です。これは、18世紀から続く村の伝統的な刺繍。この刺繍のこと、自転車での旅のことなどをユリアンナさんの店に入り込んで話していると、あるアルバムを見せてくれました。ポーランドやヨーロッパ各地で行われる民芸フェスティバルに出展したときの写真でした。そこに写っていたのが、今日のクルピエ地方のタマゴでした。
今まで、ご紹介してきたろうけつ染めでも、エッチングでも、エンボス細工でもない、見たことのないイースターエッグ。。ビロード状のふわふわとした白いヒモ(外側は白い粉が吹いているようで中は半透明、、あんみつの上にのっている白いぎゅうひみたいなんです)が巻きつけてあります。はて、これはなんだろう。。。ユリアンナおばあちゃんにこれは何?とたずねたところ、「ポーランド語でsitowieという草よ」との答え。草!?このビロード状の物体が<草>なことにまず驚き、sitowieが頭の中をぐるぐると回ります。。果たしてどんな<草>なんだろうか。その草の正体がわからぬまま、とりあえず展覧会用にとイースターエッグを注文して、うちに帰ってきました。
さっそく、sitowieについて調べたところ、日本語ではホタルイ属の植物とのこと。。植物にはあまり明るくない私ですが、ホタルイ属の説明に、イグサ(!)という記述を見つけました。これは、もしかして!そう、ポーランドクルピエ地方のこの変わった装飾のイースターエッグは日本では畳でおなじみのイグサ、とりわけイグサの髄で作られたものだったのです。
調べてみると、日本でもイグサには灯芯草(とうしんそう)という名前もあり、スポンジ状のイグサの髄を取り出し、和紙を巻いて作る和ろうそくの原料でもあることがわかりました。イグサの髄がこんなビロード風のスポンジ状のヒモだったなんてことに、まず驚き、その日本人の生活に密着しているイグサがポーランドの小さな村のイースターエッグに伝統的に使われていたなんてことにも2重に驚きました!だから、冒頭にある「所変われば作り方も変わるは」東欧各地域だけではなく、日本も含めた話だった(!)というワケ。
イースターが近い春の日、森と湿地帯に囲まれた白い森、クルピエ地方の人々は湿地帯に生えるイグサの茎を刈り取ります。イグサの皮を(上の絵のように)しごきながら剥ぐと、中からスポンジ状の髄が出てきます。それを日向にならべ乾燥させ、適当な長さに切りながらカラフルな毛糸と共にタマゴに巻きつけ装飾します。ユリアンナおばあちゃんの、白い森・クルピエ地方のイグサエッグ。ポーランド人がイグサを使うとこうなるのかぁと感心します。ぜひ、実際にごらんにいらしてください!
<東欧イースターエッグの世界展>詳細:SLOW ART web
次は、民族文化が色濃いルーマニアブコヴィナ地方へ!
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