2011/07/18

消え行く伝統を守る ~私にできること~

クルピエ地方の切り絵作家 チェスワヴァ・マルヘフカさん

今回の旅の目的の一つは、今までSLOWARTが扱ってきたウォビッツとは又違った土地のポーランドの切り絵を探しに行くことでした。以前「消え行く伝統」という記事でもお伝えしたことがありますが、ポーランド(特にマゾフシャ地方の村々)には、切り絵の伝統があり、図柄が複雑なもの、単色のもの、イコンのまわりを飾るためのもの、レースカーテンとして使用していたものなどなど、各家庭で伝統的に伝えられてきた個性的な切り絵が多くありました。

ウォビッツの切り絵

時代や生活スタイルが代わり、各家庭において切り絵の「実用性」は失われていきます。ウォビッツのカラフルで芸術性が高い切り絵は、ポーランド国内でもおみやげ品として扱われることも多く(実際に今回会った作り手さんの一人は、ポーランド政府から海外のゲストに渡される公式のおみやげとして切り絵の注文があり、それを一生懸命つくっている最中でした)、商業的に「売れる」為、今も比較的多くの切り手さんがおり民芸市などでもよく見かけますが、その他のごく素朴な切り絵は、そのデザインやオリジナリティは素晴らしい物があるにもかかわらず、作り手がすでに居なくなっている地域が大半です。


こうして考えると、現代残っている民芸品は、本来の一般庶民や農民の日々の暮らしを彩る為の芸術という意味は殆ど無く、おみやげ品として販路を見いだせたもののみが残っているというのがよくわかります。 民芸品が伝統的に家族代々伝えられてきた意味は、やはり<自分たちの生活を彩るためである>という事を考えるとその意味を失った民芸品は、このままではおそらく次の世代には残らないのではないかと、残念ながら思います。


ポーランドの民芸の現・近代史といったら大げさですが、私がこの仕事を通して見聞きしたことを少し書いてみようと思います。

ポーランドの共産主義時代については、ポーランド人にとっても人それぞれ見解が違います。もちろん大半は食べ物や物資がなく、自由が制限された共産主義の時代という認識で一致しています。

一方、田舎をめぐる今回のSLOW ARTフォークロアツアーでは各地で昔(共産主義時代)を懐かしむ声が多く聞かれました。

ポーランドには、各地にCepeliaというお土産物屋さんがあります。ワルシャワは旧市街の目抜き通り沿いに、クラクフは旧市街広場のおみやげ通り、織物会館の中に入っています。


Cepeliaは1949年に文化・国家遺産省(Ministry of Culture and National Heritage)の指導の元、ポーランドの民芸文化の保護、宣伝をする団体として設置されました。ポーランドで民芸は民族文化の誇りとしてとらえられ、国家の文化外交手段としても使われました。(共産主義時代の政治的利用な一面ももちろんありますが、)このようにCepeliaの指導・運営の元各地の民芸家さんは外国で展覧会を開いたり、作ったものはすぐにCepeliaが買いあげてくれたり、定期的な注文を受け付けたりと、安定した活動をすることが出来ていました。

1989年に共産主義が終焉を迎えるとともに、Cepeliaも完全に政府系の団体としてではなく「株式会社」という体裁になります。株式会社である以上、Cepeliaで取り扱う民芸品も「売れる」ものでなければならなくなってしまいました。



会う民芸家さんは、口をそろえて昔を懐かしがります。効率と採算を追い求める現代社会には、時間をかけて丁寧に、丁寧にしあげる、非効率的・非採算的な民芸はあまりにも即していないかのようです。織物の村の織り手さんは「昔は近くの大きい街のCepeliaに織物を持って行くとすぐに、買い取ってくれた。今は委託でしか取り扱ってくれないから、3年お店にディスプレーし続けたものを売れませんでしたって平気で返してくる・・」と嘆いていました。


モノであふれる現代社会において、手仕事の価値を理解し、それを保護する意味も含め、高いお金を出して民芸品を買うというのは、なかなか簡単なことではありません。 しかし、美術館や博物館で展示品を眺めて昔を懐かしんでいるだけでは、私たちの思いは民芸家さんにはなかなか伝わりません。現代に生き続けている伝統工芸を「買う」ことは、「私は手仕事の価値を理解している」という意思表示であり、それは作り手と文化の保護に直接つながります。


今回の旅で、感じたこと。SLOW ARTの役割は、各地の作り手さんと日本のみなさんを近づけること。そして何よりも、手作りの価値を伝えて理解していただくことだと再認識しました。民芸品は、そのひとつひとつが手作りで、個性があり、時間をかけて作った分だけストーリーがあります。モノを提供するだけではなく、そのお話と一緒に伝える。それが、現地で作り手さんの側で活動する私の役割だろうと考えています。



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