2012/05/30

ウォビッツの切り絵フジヤマの麓へ ~ウォビッツ新聞~


少し前のことですが、ポーランド・ウォビッツの新聞にて、山梨の切り絵展に際してアンナさんとグラジナさんが日本を訪れたことが記事になりました。SUSHIにSAKEにSAKURAにMt.Fuji... キーワード盛りだくさん(笑)ですが、とても好意的な記事なので、ご紹介します。

以下記事の訳文(誤訳あったらスミマセン・・)



「刺繍家のアンナ・スタニシェフスカと切り絵作家のグラジナ・グワドカ、2人のウォビッツの民芸家が320日から26日まで遠い日本の地でウォビッツの伝統工芸を披露した。

2人は本州にある山梨の富士川切り絵の森美術館で開催中の<ポーランドの切り絵展>のオープニングイベントに参加した。展覧会では芸術的なウォビッツの切り絵を展示している。2人はオープニングイベントの他にも2日間のワークショップを行った。

「日本ではどこにいっても敬意をもって、とても温かく迎えて下さいました。私たちの訪問を喜んでくださいました。とても自然に素晴らしいもてなしをして下さいました。また、私たちの技術や工芸品もとても高く評価して下さいました。」

今回の訪問は日本の美術館とトルンに住んでいる日本人の藤田泉が計画をした。
1月には美術館の館長、副館長がウォビッツを訪れ、2人の民芸家を桜の咲く国日本に招待した。展覧会はポーランド中の切り絵を集めたものだが、ウォビッツの2人が代表して日本を訪れた。

アンナ・スタニシェフスカは母から伝えられたウォビッツの様々な刺繍技術を見せるため、2ヶ月間日本へ訪れるための準備をした。展覧会では彼女の刺繍作品も多く見ることができる。

オープニングイベントでは、ポーランド大使からの祝辞やポーランド政府観光局が出席し、ウォビッツの2人も民族衣装を着て出席した。切り絵と手刺繍を披露したワークショップもとても興味深いものとなった。日本人たちはとても器用で民芸家たちと一緒に素晴らしい作品を作り上げた。参加した人たちは、みなとても自分の作った作品を気に入り、またワークショップを楽しんだ。

「ワークショップではポーランド語や日本語を教え合ったりもしました。とても心温まる体験でした。」とアンナ・スタニシェフスカ。

美術館では2人はとても細かく繊細な日本のモダンな切り絵を見ることもできた。
日本滞在中は美術館の招待で、富士山観光もした。また、富士のふもとにある素晴らしい寺社や家族経営の酒蔵、新鮮な魚をつかった本場の寿司も食べた。東京を見る時間はなかったが、今回の訪問はとても思い出にのこる素晴らしいものとなった。「招待していただいた美術館のおかげで、興味深い経験ができ、また民族衣装や切り絵、刺繍などウォビッツの伝統文化を伝えられたことはとても重要なことでした」とアンナ・スタニシェフスカ。

Łowiczanin 4/12付け


アンナさん、グラジナさんが切り絵の森美術館を訪れた時の様子はこちらでも↓



ウォビッツの切り絵に関しては以下の記事もどうぞ


ポーランドの切り絵展で展示中のウォビッツの切り絵の一部

 Stefania Borkowska作

Helena Miażek作


Grażyna Gładka作




合同会社 富士川・切り絵の森
〒409-2522
山梨県南巨摩郡身延町下山1597番地
TEL:0556-62-4111
会場 : 芝生ギャラリーと工芸館ギャラリー
開館時間 
 : 9:30~17:30(最終入館は17:00)
休館日 : 水曜日(祝日の場合は翌日)
入館料 : 一般700円 小中学生300円
団体割引(20名以上)一般600円 小中学生250円  会期: 
2012年3月24日(土)~6月24日(日)
web: http://www.kirienomori.jp/modules/art_museum/



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2012/05/26

クルピエの切り絵 やかまし村の切り絵


クルピエの切り絵の続き。前回のチェスワヴァさんのお宅を後にし、自転車のパンクも無事直ったので15kmほど離れたとなり村のGenowefa Bączek (ゲノヴェファ・ボンチェック)さんのお宅を目指しました。


この地域にはあちらこちらにコウノトリの巣があります。この時期はちょうど雛がうまれて子育てをしている時期。途中何度もこの光景に出くわしました。


実 はこの時空はまだ晴れていたのに、この雲がどんどん黒くなり10分後には夕立が降り出しました。自転車だし、もう畑と林しかないようなところなので、とり あえず松林のなかに避難。ザーザー降る雨にびしょ濡れになりながら、自転車の荷袋から雨合羽を取り出しやっとの思いではおりました。松林の中では雨宿りに ならないので、結局ザーザー降りのなか出発。もう何もかもがビショビショ。。

夕立は幸い20分くらいでおさまり、その後はまた晴空に。

と、 そんな中やっと次の目的地ゲノヴェファさんのお宅に到着しました。大きな農家のゲノヴェファさんのお宅。びしょ濡れの日本人に驚くこともなく、温かくむか えいれてくれました。お父さんが客人が来たぞーと家の奥に声を掛けると、どんどん孫たちが出てくる。4-10歳くらいの子供たちが5-6人はいたかな・・ みんな家中・庭中を駆けまわってなんだかやかまし村みたい。


さて、ゲノヴェファさんの切り絵。ゲノヴェファさんの家族が代々切ってきた切り絵は、クルピエの一般的な単色のものとは一味違い、特徴的な多色の可愛らしい切り絵です。


切り絵の森美術館で展示中のゲノヴェファさんの切り絵


<-Polska Wycinanka Ludowa- Aleksander Brachowski 1986>より

レルーヤとよばれる切り絵の画集。一般的なものは単色ですが、左ページの中央のレルーヤと右ページのものがゲノヴェファさんのお母さんが作ったものです。

同 じ地域の切り絵でもこうしてみると、家族の特徴がわかります。そうして、この家族のモチーフと特徴をを代々かえることなく受け継いでいるというのも興味深 い点です。こうして、同じ物を受け継いでいくことで、必要のないものは切り捨てられ、必要で美しいものだけが洗練されて残っていく過程が伝統工芸品の一番 重要な部分ではないでしょうか。



畑仕事の暇を見つけては、作りためているという切り絵。一枚一枚綺麗に折線どおりに折られて新聞紙や雑誌のページの間に挟まって保管してありました。今は、孫たちにも教えているそう。

ゲノヴェファさんに譲ってもらってきた切り絵の森で展示中の切り絵の一部


Gwiozdy- <星>と言う名の切り絵の中央には、イースターのウサギたちと、イースターエッグのモチーフ。こんなに細かいものも、羊毛ばさみで切っているのだからすごい。


同じ鳥をモチーフにした多色の切り絵でも、ウォビッツのものとはやはり違う。この地域の特徴もあり、多色の可愛らしさもありゲノヴェファさんの切り絵は民俗研究資料としても価値があるのではないかと思います。


切り絵の森美術館で開催中の<ポーランドの切り絵>展ではクルピエの切り絵を60点、ウォビッツの切り絵を70点程展示しています。また、小さな作品は販売もしていますので、ぜひ実際にご覧にいらしてください。


合同会社 富士川・切り絵の森
〒409-2522
山梨県南巨摩郡身延町下山1597番地
TEL:0556-62-4111
会場 : 芝生ギャラリーと工芸館ギャラリー
開館時間 
 : 9:30~17:30(最終入館は17:00)
休館日 : 水曜日(祝日の場合は翌日)
入館料 : 一般700円 小中学生300円
団体割引(20名以上)一般600円 小中学生250円  会期: 
2012年3月24日(土)~6月24日(日)
web: http://www.kirienomori.jp/modules/art_museum/



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2012/05/23

クルピエの切り絵 チェスワヴァさんを訪ねる

チェスワヴァ・マルヘフカさん

只今開催中の<ポーランドの切り絵展>に関連して、本日も前回の続きでクルピエ地方の切り絵のお話。クルピエ地方には現在7-8人ほど伝統的な切り絵を作っている民芸家さん達がいらっしゃいます。山梨の切り絵展では、クルピエ地方のCzesława Marchewka(チェスワヴァ・マルヘフカ)さんと、Genowefa Bączek(ゲノヴェファ・ボンチェック)さんにこの展示の為に作品を作って頂きました。

切り絵を求めて再度クルピエを訪ねたのは去年の6月。自転車旅行の途中でした。クルピエに入った途端、私の自転車がパンクしました。比較的町のそばにあるチェスワヴァさんのお宅を2kmほど自転車を押しながら訪ねて行きました・・それでも人の全く住んでいそうもないところを20kmくらい走ることもあるので、これは不幸中の幸い。


パンクした自転車をチェスワヴァさん宅のガレージをかりて夫が直している最中、チェスワヴァさんは、私の為だけに綺麗にアイロンのかかった民族衣装をタンスから出してきて着替えてくださいました。民族衣装を作れる人も少なくなりましたが、これも彼女の手作りの衣装。


チェスワヴァさんは、伯母さんとおばあさんから切り絵を習いました。彼女が小さかった頃は、家の壁や学校の壁に子供達や家族が作った切り絵がたくさん貼られていたそうです。今は、地元の学校や、民芸市、ポーランド各地の民俗博物館などでワークショップをひらいたり、お孫さんに教えたりしています。

Gwiozdy(星)とよばれる円形の切り絵の作り方を見せてくれました。

色紙を大きさに合わせ6等分から8等分に折ります

この切り絵は下書きを書きません。即興で切っていくので、一つとして同じ物ができません。
切っているのは、20cm以上もある大きな羊毛バサミですが、先端部分を持って、器用にサクサクと紙を切っていきます。 

輪郭を切り終えたら、紙を模様に合わせて折り変えていきます 

こうして、切る前からすでにチェスワヴァさんの頭の中にはすでに完成した作品があります 

 小さな作品がものの15分程度であっという間に出来上がりました

折りたたんだ紙を広げます


<星>とよばれている切り絵。一つとして同じ形がないところや、左右上下対称の美しさは雪の結晶のようにも見えます。クルピエ地方では、クリスマスなどの飾りとしてよく作られたそうです。


その他展示中のチェスワヴァさんの作品

聖母子像やヨハネ・パウロ2世(以前の法王)の切り絵はポーランド各地の教会や個人から時々注文が入るそうです。


素朴でかわいらしい聖母子像


生命の木 レルーヤ

次は、もう一人の作家さん、ゲノヴェファさんを訪ねます。彼女もまた同じクルピエ地方の切り絵作家ですが、家族代々続く切り絵のパターンを守って作り続けています。次回に続く



合同会社 富士川・切り絵の森
〒409-2522
山梨県南巨摩郡身延町下山1597番地
TEL:0556-62-4111
会場 : 芝生ギャラリーと工芸館ギャラリー
開館時間 
 : 9:30~17:30(最終入館は17:00)
休館日 : 水曜日(祝日の場合は翌日)
入館料 : 一般700円 小中学生300円
団体割引(20名以上)一般600円 小中学生250円  会期: 
2012年3月24日(土)~6月24日(日)

 コチラは、恵文社さんのウェブサイトで5月25日まで販売中の芸術家達のピサンキ展。とても好評で、3度目の追加商品が本日アップデートされました。今年は東京・京都のみの巡回だったので、見にいらっしゃれなかったという方は、覗いてみてくださいね。(写真をクリックするとサイトに飛びます)






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2012/05/16

クルピエ地方 緑の森の民の伝統


山梨・切り絵の森美術館での<ポーランドの切り絵展>は引き続き好評開催中です。GW中は、切り絵の森美術館があるクラフトパークがたくさんの人で溢れていたとのこと。広大な緑の敷地では、切り絵美術館のほか、山梨の地元工芸品が楽しめる工芸館やカヌー場などもあり、ご家族で一日楽しめる公園です。

今回の<ポーランドの切り絵展>では、SLOW ARTで今まで開催してきた企画展でお馴染みのウォビッツの切り絵の他にも、ポーランドの様々な地方の切り絵をご紹介しています。 ポスターの中央背景と左側にあるのが、ウォビッツの切り絵、中央はオポチノ地方、右側がクルピエ地方の切り絵になります。

クルピエやオポチノの切り絵は色使いや細かさ、華やかさではウォビッツの切り絵に劣りますが、その地方オリジナルのデザインや地域性が現れた切り絵が特徴です。

 <-Polska Wycinanka Ludowa- Aleksander Brachowski 1986>より

今日は、クルピエ地方の切り絵が生み出されるクルピエという土地について、すこしご紹介します。
クルピエ地方は、ワルシャワを県都とするマゾフシェ県の東北に位置します。ここは大きな森林地帯で、puszcza zielona(緑の森)とpuszcza biala(白い森)地帯に分けられ、それぞれの土地に16世紀~17世紀頃人々が定住しました。

森林地帯であったため、昔からこの地方の人々は養蜂や狩猟、林業、採掘、琥珀などの産業に従事してきました。小さな家族や村単位の生活を守り、これとともに伝統的な芸術も多く生まれました。


 琥珀:木の樹脂からつくられる宝石。ポーランド土産の定番。日本と比べると驚くほど安いです

 パルマ:聖枝祭の日のパルマ Łysyというところの聖枝祭がとても有名です。聖枝祭についてはコチラ。この紙で作る花はパルマを飾ると共に、部屋の飾りとしてもよく使われました。

 クルピエ地方(緑の森puszcza zielona)の民族衣装:この衣装の特徴は女性がかぶる円柱上の黒い帽子と、レース編みのエプロン

こちらは、今でも6月に行われるwesele kurpiowskie (クルピエの結婚式)の様子。村の夏祭りの一巻として実際に結婚するカップルが民族衣装に身を包み伝統的な結婚式を行います。観光客も参加でき、私も去年の夏に見に行きました。

 今は織っている人がほとんどいませんが、織物の伝統もあります。毛織物で、幾何学模様のくり返しが多い織物です。


そして切り絵
 
 <Firanki レースカーテン>とよばれる白い紙の切り絵は最も古い切り絵の原型。昔の農家では、このように白い紙をレース状に切り取り窓に吊るし、カーテンの代わりにしていました。

 <Las 森>という種類の切り絵はクルピエ地方にのみ存在するタイプの切り絵。単色ですが、細工が細かく、身近な森の動物達や、木こりなどの様子が切り取られています。

1900頃に作られたレルーヤ。様々なデザインが存在する

<Leluja レルーヤ>とよばれるタイプのこの切り絵は生命の木を表しています。ピサンキでもおなじみですが、鳥やニワトリは生命誕生のシンボル。またレルーヤという名前は賛美歌のハレルヤからきており、キリスト教復活祭の飾りとしても作られたそうです。

  <Gwiozdy 星> とよばれる単色の切り絵は、色紙を折り重ね、作家が即興で切っていきます。星とよばれているところから、クリスマスの飾りとして作られることが多かったそうです。

 この地域は、深い森に阻まれ何世紀にもわたりあまり外の社会との交流がなかった為に、このような独特の文化が生まれて、守られてきたのだと、民俗博物館の方が教えて下さいました。

今回の切り絵展の為に、私も何度かクルピエ地方へ行き、古民家や民芸家の方々を訪ねました。クルピエ地方は大きな森林地帯ですが、人が住んでいるのはこじんまりとした本当に小さな地域です。この小さな地域で様々な奥深い文化が生まれ、今日のポーランドで広く知られる、今も生きるポーランド伝統文化の源となっているのは驚きます。
この伝統がこの先も永く続いていって欲しいと願うばかりです。

次の記事では、クルピ絵地方の二人の切り絵作家さんを訪ねます
 合同会社 富士川・切り絵の森
〒409-2522
山梨県南巨摩郡身延町下山1597番地
TEL:0556-62-4111
会場 : 芝生ギャラリーと工芸館ギャラリー
開館時間
 : 9:30~17:30(最終入館は17:00)
休館日 : 水曜日(祝日の場合は翌日)
入館料 : 一般700円 小中学生300円
団体割引(20名以上)一般600円 小中学生250円  会期:
2012年3月24日(土)~6月24日(日)


 コチラは、恵文社さんのウェブサイトで5月25日まで販売中の芸術家達のピサンキ展。とても好評で、3度目の追加商品が本日アップデートされました。今年は東京・京都のみの巡回だったので、見にいらっしゃれなかったという方は、覗いてみてくださいね。(写真をクリックするとサイトに飛びます)


最近ブログを中々書けてないのですが、頑張ります。ちなみに、FacebookでもちょこちょこSLOW ART情報やポーランドフォーク情報などを流しています。SLOW ARTのFacebookページもお暇な時いらしてください。 http://www.facebook.com/profile.php?id=1458714868





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