さて、10月の<ウクライナ・フツル民族の手仕事展>まで一ヶ月を切りました。そろそろフツルの話をはじめましょう。
今日は「フツル民族の伝統と歴史について」(ちょっと長くなります)
フツル民族は、西ウクライナカルパチア山脈の村々に暮らす山岳民族です。(地図黄色部分)
カ ルパチア・フツルランドへはリヴィウ中央駅4番線からでている列車が連れていってくれます。約4時間半の旅。途中ピロシキを食べたり、のどかな車窓をたの しんだり、寝台に寝転んだり、隣の席のおじさんにウォッカをすすめられたり・・しているうちにカルパチアの玄関口コロミアに到着しました。これからフツル の旅が始まります。
西 ウクライナは長年にわたり、ポーランド・オーストリア・ロシアの支配を受けてきました。国が変わり、人が移動し、文化の交流があり、時には厳しい制限もも うけられますが、フツルの人々はカルパチアの深い山々に守られ物質面・精神面における独自の伝統的秩序を常に守って暮らしてきました。その立地から、ウク ライナ語・ポーランド語・ルーマニア語・ドイツ語(オーストリア)・スロバキア語などに似る独特の方言も持っています。
人 々は、 夏の緑の多い時期は羊の遊牧や養蜂をしてすごし、冬の厳しい雪に覆われる時期は羊の毛の織物や装飾品の刺繍、彫金や彫刻をして近くの街に売りに行ったそう です。森の木は木工や建設に必要な良質な木材を、羊は服や織物のためのウール、革のジャケットやカバン、靴などを作る為に役立ちました。
真珠や彫金で細工を施した素晴らしいフツルの木工細工。織物、日常の農具や生活道具、チーズ細工、刺繍、バター、民族衣装、ピサンキなどなどフツル民族の暮らしを彩る工芸品の数々が彫られています。
フ ツルの美学は、カルパチア山脈の山々、森、川、湖などの雄大な自然によって養われたのでしょう。民族衣装はとてもカラフルで装飾が施されていない所がない というほど刺繍やビーズ、宝石やガラス細工、彫金などで装飾されています。男性は宝石や真珠で装飾された銃や斧などを常に持ち歩いていました。
今はとても経験なキリスト教徒であるフツル民族ですが、フツルの伝説にはキリスト教の神やイエスは余り出て来ません。その代わり彼ら独自の神や悪魔・ドラゴンや魔術師、精霊たちがいます。
フツルの世界では1人の神が支配するのではなく、様々な要因が悲喜こもごもとしているようです。それも自然の中で暮らし、自然の中の様々なものに精霊や神、悪魔を見出し、それに対して祈り、歌い、感謝をしてきた民族だからでしょう。
ソ ビエト支配時代1950年代には、ソビエトに対する抵抗運動がカルパチア地方では繰り広げられ、フツル民族はソビエト政府から<ブルジョア民族運動> だとして、弾圧にあいます。宗教は禁止され、フツルの工芸品を作ることやコレクションすること、音楽を演奏することなども禁止されました。
それでも、フツルの工芸家達は作品を作り続けました。また弾圧に屈しなかった当時のコレクター達のお陰で、今も多くの芸術品が保護されています。当時のフツルアートのコレクター達は、Fire fighters (ソビエトの火と戦う戦士たち)と呼ばれたそうです。
1980年代ソビエト崩壊の頃になると再び民族運動も盛んになります。
フツルの男性 フツル民族フェスティバルにて
さてフツル民族の伝統や歴史が少し分かったところで、次からはフツルの職人さんの工房や実際に企画展で展示するすばらしい工芸品の数々とそのお話をご紹介していきたいと思います。
*古い白黒写真は、フツルの村々を訪ねて古い写真をスキャンし、アーカイブを作るプロジェクト:http://www.hutsul.com.ua/より
■チェドックザッカストア
2011 10.27Thu-11.13Sun
東京都千代田区東神田1-2-11
アガタ竹澤ビル404
TEL 03(6240)9500
OPEN 12:00-19:00
CLOSE 期間中無休
■Robin's Patch
2012 1.12Thu-1.31Tue
愛知県名古屋市千種区
稲舟通1-15-3
TEL 052(734)3185
OPEN 12:00-19:00
CLOSE 水曜日
■Letenka
2012 2.11Sat-2.29Wed
徳島県徳島市末広4-8-32
TEL 088(612)8800
OPEN 12:00-19:00(土日祝-18:30)
CLOSE 金曜日
待ってました!
返信削除白黒写真の数々すてきですね。うっとり眺めていていたら、フツルの音楽が流れてきましたよ(頭の中で、、、)。素晴らしいプロジェクトに感謝です。
調子に乗り、どの村のお写真か知りたくなり、つい探し当ててしまいました。
自分の執念が怖ろしい。。。
フツルの歴史、たいへん勉強になります。ありがとうございます!
そういえば、大変フォトジェニックなフツルのおじいさんがいて、その方が最近お亡くなりになったのですが、どうやら白魔術とか呪術とか自然療法などを行う方だったそうです(汗)。
せっかく現代まで生き延びてくれたのに、ひとつ伝統が失われてしまったように感じられ、残念に思っているところです。
コロミヤへの列車、迫力ありますね!
(ちょっと腰がひけました)
列車の旅も楽しまれたようで何よりです☆
noriさん
返信削除村を巡って古い写真を保存するプロジェクト素晴らしいですよね。このウェブサイトだけでもフツル民族のエトノグラフ写真集ができそうです。写真も被写体も年季が入ってていいのですが、写真を飾ってるハンドメイドの枠や装飾もすごく可愛くないですか。切り絵があったり、色ペンでほっぺたを赤く塗ってたり・・センスいいなぁと思ってしまいます。。
フォトジェニックなおじいさんはシャーマンの方ですね。フツルの伝説なんかを調べていた際にシャーマンの役割がかなり大きかったんだなぁと思ってたところです。それにしても、そんな情報どこで仕入れてきたんですか・・wフォトジェニックなおじいさんはnoriさんのカメラに収まっていたりしますか。あればぜひ見てみたいです!
列車は、迫力ありましたが窓の一つ一つにウクライナ国鉄のロゴ入りのレース編みがかかっていて可愛かったです。
人ごとのように書いたけど、よく考えると(リヴィウに戻るときに)その列車に乗ったことありそうですw。以前はたぶん、ポーランドのプシェミシェル発の列車だったのではないかなあ。
返信削除おじいさんですが、たまに見ているウクライナ語のサイトに追悼会のお知らせがあったんです。写真入りだったので(←コレ重要)気がつくことができました。
おじいさん、生まれはフツルではないようですがフツル最後のシャーマンっぽいです(ちなみに最後の皇太子オットー・ハプスブルグに似てるかも?)。
或るウクライナ観光ツアーのスケジュールに「おじいさんに会う」という予定が組み込まれていたり(笑)DVDや本も書かれていて、ずいぶんご活躍されていたようです。去年撮影されたビデオを見ると、かくしゃくとされていて知れば知るほど逝去が悔やまれます。(お写真は何枚か撮らせてもらってますよ。ご興味あればいつか!)
おじいさんをご存じの方のブログ(おじいさんについては最後の方)
ブログからはyoutubeへのリンクあります
http://mariasonevytsky.com/2011/09/27/networking-frenzy-fieldwork-videos/
訃報を伝えるニュース(お写真入り)
http://korrespondent.net/ukraine/events/1239845-v-ivano-frankovskoj-oblasti-ubili-izvestnogo-molfara